スマホは最も利用率が高い

もう一つの手法は、お客さまのニーズを良く理解することができるよう、お客さまとのコミュニケーションの頻度や深度を増やすことです。これを実行するのに最も効果的なのはデジタルメディアの活用です。

インターネットにアクセスするデジタル機器として、スマートフォンの利用率はこの4年間で年60%の成長をみせ6割を超えました。いまやもっともポピュラーなデジタル機器となっており、これを見逃す手はありません。

お客さまは、特にアジアにおいては、欲しいものをいつ、どのように買うかを自分で決め、いつでも接触できることを期待しています。世界のインターネットユーザーの約半分はアジアにいて、アジアにおけるeコマースの市場は2014年は52.5兆円(525billionドル)あり、2017年には2倍の100兆円超の市場になるとみられています。

メットライフでは、このアジアでデジタルを活用した生命保険会社のリーディングカンパニーになることを目指しています。私たちはお客さまの知見を深め、新しい販売チャネルとサービスの窓口を広げるためにスマートフォンとソーシャルメディアの活用に投資しています。これにより、他社との差別化、優位性を生み出すことができると考えています。

韓国においては、モバイルアプリを展開しています。ご契約者さまの10%がこのアプリを使用し、保険料の支払い、住所変更、保険金請求、お問い合わせなど、毎月1万3000回ものオンライン取引が行なわれています。実はこのアプリ、2013年のアジア保険テクノロジーアワード(AITA)で、ベストモバイルアプリケーション賞を受賞しました。

中国のモバイル機器のユーザー数はアメリカ以上ですが、メットライフは中国でもっとも広く普及しているインスタントメッセンジャーのWeChat(ウィーチャット)に外資系生命保険会社で初めてチャンネルを発信して、約6万人のご契約様に毎日利用されています。

また、中国でもモバイルアプリを提供しており、保険料の試算から申し込み、そして保険証券の受け取りまで、お客さまはご自身の重要な書類や情報をオンラインで管理できるようになっています。2014年4月に開始以降、2万1千人の登録者があり、利用者数はさらに増加しています。

他のアジアの国々でもデジタルでの申込書を推進しており、日本での展開も目指しています。

日本においては、インターネット販売での保険契約が3年前にはほとんどなかったのですが、今では月1,000件を超え順調に伸びてきています。また、まず私どものウェブサイトの商品ページにアクセスされ、その後対面での説明を希望され、説明を受けてから契約されるお客さまも多くいらっしゃいます。オンラインがコンサルタント社員や代理店さんといった対面での販売につなげる重要な入り口となっています。

日本を成長の機会として捉えるには、お客さまの声に耳を傾け、ニーズを理解するためのツールとテクノロジーが必要です。ビックデータとデジタルは保険業界がお客さまサービスを次のステージに進めるために重要な2つの鍵と言えます。

メットライフ生命保険株式会社 代表執行役 会長 社長 最高経営責任者
サシン・N・シャー

1967年生まれ、米国出身。米国スティーブンス・インスティテュート・オブ・テクノロジー卒。99年メットライフ入社。2011年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニーリージョナル専務執行役員、12年メットライフアリコ代表執行役専務最高執行責任者などを経て、現職。
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