また、通勤電車のなかや始業前のオフィスは、自分の時間が持てることもメリットなのだという。
「始業前のオフィスには、社員がほとんどいません。会議もないし、電話もかかってこないので、時間を自分の好きなように使えます。逆に勤務時間中は、いろいろな会議や打ち合わせがあります。上司や取引先からも呼びつけられるし、部下の相談も受けなければならない。私の場合、自分の時間はせいぜい3割程度しかありませんでした。仕事に集中できる自分の時間は貴重なんです。通勤電車のなかも、まわりは他人ばかりなので、意外に仕事には没頭しやすい環境なのです」
そして、席につくとまず、その日の仕事の計画を立てるそうだ。
「仕事は初めが肝心です。計画を立てておくと、仕事の無駄がなくなります。でも、無計画なまま仕事をしている人が多い。だから、必要ない仕事までしたり、非効率な仕事の進め方をしたりして、勤務時間内に仕事が終わらず、残業が増えてしまうのです」
残業ができなかった佐々木さんの時間管理は徹底している。どんな仕事でも必ず締め切りを設け、厳守するように心がけてきた。締め切りがあると、真剣になって仕事に取り組むし、段取りをよくしようと工夫するようになる。その結果、仕事の能率がさらにアップするからだ。
佐々木さんの取り組みからは「仕事の効率化」「車中オフィスの活用」「仕事への集中」「仕事の計画化の促進」という4つのメリットが朝活にはあることがわかる。そして、もう1つ忘れてはならないメリットが「仕事と家庭の両立」だ。
ビジネスマンと“主夫”の二足の草鞋を履くハンディを背負いながら、役員にまで上りつめた佐々木さんは、まさに「ワーク・ライフ・バランス」の手本といってもいい。佐々木さんの秘策である朝活は、大いに注目されるべきだろう。
東レ経営研究所特別顧問 佐々木常夫
1969年、東京大学経済学部を卒業し、東レに入社。2001年、同期トップで取締役就任。03年、東レ経営研究所社長に就任し、10年から現職を務める。『ビッグツリー』『そうか、君は課長になったのか。』など著書多数。
1969年、東京大学経済学部を卒業し、東レに入社。2001年、同期トップで取締役就任。03年、東レ経営研究所社長に就任し、10年から現職を務める。『ビッグツリー』『そうか、君は課長になったのか。』など著書多数。
(南雲一男、小倉和徳=撮影)