朝早く起きたほうがいいことはわかっているのだが、具体的なメリットとは何か──。
朝活のプロの実践方法からそれらを引き出すとともに、脳科学で早起きによる潜在能力を引き出すメカニズムを解明する。

朝一番の連絡で顧客の信頼を獲得

弁護士 高井伸夫氏

ビジネス以外の世界でも、朝時間を活用して成功を収めた人は少なくない。

その一人が弁護士の高井伸夫さん。法曹界における、朝活プロフェッショナルの代表選手ともいうべき存在だ。

高井さんは、63年に弁護士登録、73年に独立し、自分の法律事務所を開設した。弁護士としてのキャリアは半世紀に及び、人事・労務問題のエキスパートとして知られている。現在も数多くの企業の法律顧問を務めて活躍している。

朝活のキャリアにも年季が入っていて、弁護士として独立以来、約40年間も続けてきたという。いまでも午前4時半~5時に起床して、午前6時に事務所に行く。天候がよければ、出勤前に散歩をする。気になる情報は、早朝に資料や新聞を読んで先取りしておく。午前10時までには、その日の決裁と指示をあらかた済ませてしまうそうだ。ちなみに、筆者が取材で高井さんの事務所を訪問したのも、午前7時半だった。

「実はね、僕はもともと典型的な夜型人間だったんですよ。けれども、それでは人から後れを取ってしまうと考えました。競争社会で勝ち残るにはスピードがカギ。早起きは三文の徳。どんな仕事でも先手必勝です。孫子の兵法にも、『拙速は巧遅に勝る』という教えがあります。上手にできても時間がかかるのはだめで、下手でも早くできたほうがいいということ。世のなかが変化するスピードは、どんどん速くなっています。夜型人間は後手に回らざるをえないから、どうしても不利になる。しかも、僕のクライアントは大半が経営者で、ビジネスマンだから朝型人間です。彼らの相手をするなら、さらに一歩先の早朝に手を打っておかなければならない。それで独立を機に、思い切って朝型人間に変身しました」

高井さんはこれまで、数多くの経営者との交流があったが、財界の大立者には「超朝型人間」が多かったという。なかでも感銘を受けたのが、石川島播磨重工業や東芝の社長、臨時行政調査会会長などを歴任した土光敏夫氏だ。

「土光さんに初めてお会いしたとき、アポイントメントは午前7時20分でした。当時、僕はすでに朝型人間だったのですが、『それにしても早すぎる』と思いました。ところが、聞いてみると、土光さんは、午前6時半には出社しているとのこと。これには正直驚きました。そして土光さんに触発されて、僕もそれからは午前6時には事務所に行くようになったのです」