朝早く起きたほうがいいことはわかっているのだが、具体的なメリットとは何か──。
朝活のプロの実践方法からそれらを引き出すとともに、脳科学で早起きによる潜在能力を引き出すメカニズムを解明する。
昔から「早起きは三文の徳」といわれてきたが、徳をするのは三文どころではないかもしれない。仕事で大きな実績を残したり、スピード出世をしたりした人を調べてみると、“早起き”の人が大勢いる。世は「朝活」ブームだが、まずは朝活の元祖とも呼ぶべき、先輩ビジネスマンを紹介しよう。
東レ経営研究所特別顧問を務める佐々木常夫さんは、いまでも午前6時半に自宅を出て、始業よりも1時間早い午前8時には出社するのが日課だ。
佐々木さんは1969年に東レに入社、系列繊維商社の再建、プラスチックの新規事業の立ち上げなどで手腕を発揮し、2001年に経営戦略を統括する取締役経営企画室長に就任した。役員に昇進したのは、事務系の同期では佐々木さんがトップだったという。03年には、グループのシンクタンクである東レ経営研究所の社長に就任している。
こうした経歴を並べていくと、順風満帆なエリートコースを歩んできたかのように見える。しかし、佐々木さんのビジネスマン人生は決して平坦ではなかった。
「妻が84年ごろに肝炎を発症し、入退院を繰り返すようになりました。さらに、97年ごろからはうつ病も併発し、一時は自殺未遂を起こすほど症状が悪化しました。妻の療養中は、私が看病をしながら、家事一切をこなさなければなりません。育ち盛りの子どもも3人いました。しかも、一番上の長男は生まれつき障害を抱えており、その世話もしなければならないのです」