朝早く起きたほうがいいことはわかっているのだが、具体的なメリットとは何か──。
朝活のプロの実践方法からそれらを引き出すとともに、脳科学で早起きによる潜在能力を引き出すメカニズムを解明する。
快の感情で潜在能力を発揮
朝時間の活用は心理面からも重視されていて、メジャーリーガーの川﨑宗則選手など、多くのトップアスリートのイメージトレーニングを指導してきたメンタルトレーナーの久瑠あさ美さんは「イメージトレーニングの効果を上げるためには、早朝の時間帯に行うのが最もいいのです」という。
「脳の働きには、自分で意識できている顕在能力と、意識できていない潜在能力があって、そのうち潜在能力が9割以上を占めていて、自分を変える大きなパワーを秘めています。そして、早朝はその潜在能力を発揮させる絶好のチャンスなのです。早朝は脳が覚醒しきっていない意識と無意識の境目である“まどろみ”の時間。頭のなかが白紙の状態になっているため、潜在意識を引き出しやすいからです。早朝は一人きりの時間であることが多く、自分の心を見つめ直す『マインドフォーカス』にも向いています」
久瑠さんは「朝にイメージトレーニングで意識をリセットしておけば、充実した1日を送れます」ともいう。具体的にいうと、その日の出来事を予想して「それを早くやってみたい」とワクワクすることがポイントなのだそうだ。そして、そうすることで朝活の5番目のメリットである、モチベーションを1日中アップさせ、アグレッシブな行動ができるようになる。うれしい、楽しいといった快の感情が、潜在能力を発揮させる原動力なのだ。
とはいえ、楽しいことが毎日続くわけではない。気重な予定がある日は、ワクワクする気になれないはず。そんなときにはどうしたらいいのか。
「たとえば、上司が居並ぶ会議でプレゼンをする日だとします。『失敗したらどうしよう』『出席したくないが、仕事だから仕方がない』などと思っていては、モチベーションは下がる一方です。そうではなくて、『自分を認めてもらえるかも』『そうすれば、昇進・昇給が待っている』などと考えれば、やる気が出てきませんか? つまり、『have to(~しなければならない)』ではなく、物事を前向きに捉えて『want to(~したい)』と思えるように自分の意識を変えていくのです」
ちなみに、夜寝る前も意識と無意識が交錯する、まどろみの時間。「明日は楽しいことがある」などと予行演習をしておくと、翌朝のトレーニングの効果がアップするそうだ。
東京・渋谷のカウンセリングルーム「ff Mental Room」代表。精神科・心療内科の心理カウンセラーとして勤務後、メジャーリーガーの川﨑宗則選手をはじめとするアスリートたちのメンタルトレーニングに積極的に取り組む。