佐々木さんは働き盛りで、会社では激務に追われていた。そんな時期に仕事と家事・育児の両立という難題を突きつけられ、佐々木さんが見出した解決策が“朝時間の活用”だったのだ。

「朝5時半に起床して、朝食と学校に持たせる子どもたちの弁当を作らなくてはなりません。否応なく、早起きの生活になりました。夕食の支度も待っているので、午後7時すぎには帰宅する必要があります。それ以前は、午後10時ごろまで会社で働いていましたが、午後6時には会社を出るようになりました。当然、残業はできないので、早朝出勤をすることにしたのです」

自宅から会社までの通勤時間が約1時間、出社してから9時の始業までが1時間。佐々木さんは、その間の2時間にも仕事をする。つまり、2時間の残業をしているのと同じなわけだ。しかし、その朝の2時間を佐々木さんは「ゴールデンタイム」と呼ぶ。日中の勤務時間よりも、仕事が格段にはかどるからである。

佐々木さんは「通勤電車を“車中オフィス”にしている」という。首都圏の通勤電車は、朝のラッシュ時には非常に混雑するので、とても仕事どころではない。ところが、早朝ならすいているので、座席に悠々と座れる。

「駅に着くまでの1時間は、フルに仕事に使えます。会社の書類をチェックしたり、仕事についての考えを巡らしたりします。資料は業務別に4種類に分けてファイルにはさみ、常にバッグに入れて持ち歩いています。電車のなかでは、文章は書きづらいのですが、メモを取ったり、携帯電話のメールを打ったりすることはできる。結構いろいろな仕事ができますよ」

ちなみに、早い時間に帰宅しても電車はすいている。それゆえ佐々木さんは帰りの電車も車中オフィスにしており、会社から持ち帰った仕事をすることが多いそうだ。