会社を辞めずに独立せよ
私はこれまでにサラリーマンから別の道へ転身して成功した150人にインタビューを行いました。NHKから落語家へ、あるいはNTTから提灯職人へなど彼らの転身プロセスをたどることで、自分の働き方を見直すことができました。
その中で2つのポイントが見えてきました。1つは、時間の経過がなければ、自分を深めることができないということ。自分自身を変えることは困難ですが、時間をかけて自分の立ち位置を変えれば会社との関係は大きく変化します。そうすれば、社内の景色は相当違って見えるようになるのです。
もう1つのポイントは、会社のコミュニティを大切にすること。会社には労働を提供して報酬を得る場所というより、仲間との共同体という側面が強くあります。人のつながりの大切さは忘れてしまいがちですが、いきなり退職して独りぼっちになったら行くところすらなくなります。
会社のコミュニティを大切にしつつ、次のステップを考えてみる。その結果がどんな形になるかは人それぞれでしょう。私がお勧めしたいのは「会社を辞めずに独立する」という方向性です。会社の仕事を続けながら、自分なりの天職やライフワークを模索するのです。
私自身、会社の仕事とは別に始めた執筆活動が大きな充実感とやりがいをもたらしてくれています。本業がおろそかになると考える人がいるかもしれませんが、私は執筆活動の充実にともなって会社の仕事の質もよくなっている実感があります。
自分の核心につながっている何かを見つけることができれば、仕事も充実して会社にぶら下がってなどいられません。
楠木 新
1979年、京都大学法学部卒業後、大手企業に勤務。人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験。著者に『サラリーマンは、二度会社を辞める。』『人事部は見ている。』などがある。
1979年、京都大学法学部卒業後、大手企業に勤務。人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験。著者に『サラリーマンは、二度会社を辞める。』『人事部は見ている。』などがある。
(構成=宮内 健)