給料は高い、経費は使う。しかし就業態度が悪く、業務の遅滞やミスなどが目立ち、業績に貢献しないどころか損失を与えている。更生してもらいたいが、もはや無理……。そういう中高年の問題社員が、あなたの会社にもいませんか。

日本は解雇規制が非常に厳しく、問題社員であってもクビにするのは難しいと思われています。しかし、一定の手続きを踏めば解雇することは可能です。ただ、そのときは、訴訟に持ち込まれるリスクを覚悟しなければなりません。訴訟になれば、敗訴して賠償金を支払わされる恐れがありますし、体力のない中小企業の場合は、問題が長期化すること自体が大きな痛手です。となると、解雇するよりも、まずは自発的に辞めてもらうことを考えるべきです。

では、どうしたら辞表を書いてもらえるか。私がクライアントにアドバイスするのは、「相手の立場から考えましょう」ということです。

たとえば、50代の社員A氏は、業務の遅滞やミスなどが多く、事実上、在籍しているだけで会社に損害を与えているとします。A氏に辞めてほしいなら、まずはA氏周辺の事情をつかんでおくことです。平たくいえば、「会社にしがみつかなければいけない私的な事情がどれだけあるか」を知ることです。

A氏がもし、家賃収入など会社以外の「食い扶持」を持っているなら、退職勧奨にすんなりと応じるかもしれません。そのときは、円満に辞めてもらえばいいでしょう。

一方、食い扶持がなく、転職してもいま以上の年収が望めないとしたら(50代の問題社員のほとんどが当てはまります)、「絶対に削れない費用がどれだけあるか」がカギになります。その事情を調べるのです。

たとえば、家族構成や住居の状況です。子どもがいたら、成人しているかどうか。持ち家だとしたら、ローン残高はどれほどか。ローン残高は年末調整のときに判明します。