岡崎慎司(サッカー日本代表FW)
平凡だけど、平凡ではない。派手さはないけど、迫力がある。地味だけど、いぶし銀の光りを放つ。もはや日本を代表するストライカーである。
サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会に向けた日本代表の国内最終戦、キプロス代表戦でも岡崎慎司(マインツ)の動きは際立った。執拗なまでに相手の最終ラインの裏を狙い続け、ピッチを走り続けた。
日本は1-0で勝った。岡崎は「今日は勝てたからよかったけれど」と言った。
「ワールドカップになったら、全然余裕がなく、チームのプレーの選択肢に困る時が出てくる。その時、自分が裏に出れば、ある程度、プレッシャーを回避できるわけじゃないですか。基本的には、自分は裏のぎりぎりのところで勝負したいと思っています」
からだのキレ、相手の動きを読む冷静さ、シュートの選択だけでなく、それを実現する技術も高くなってきた。ベースは献身的な運動量の多さである。
「無駄走りにも、よい無駄走りがあれば、そうじゃないものもある。(味方に)見てもらえなかったら、意味がないじゃないですか。そういう意味で要求することも大事かなと思っています」
兵庫県宝塚市出身。小学校2年生の時にサッカーを始め、滝川第二高校で活躍した。モットーが「一生ダイビングヘッド」。不器用でも、ひたむきにヘディングでゴールを目指してきた。近著のタイトルが『鈍足バンザイ!』(幻冬舎plus)である。
初めてW杯に選ばれた4年前の南アフリカ大会では、先発ではなく、ベンチスタートが多かった。大会から8カ月後、清水エスパルスからドイツのシュツットガルトに移籍し、昨年、マインツに移った。積み重ねてきた努力が開花し、マインツでは13-14年シーズン、15ゴールをマークした。
今、ノリに乗っている。4年間で成長しましたか?と聞かれると、実直な28歳は「しています」と言い切った。
「成長していると思うし、いろんなものを感じていると思う。前回W杯はチームが守備的に戦ったところもあったので、今回は自分たちが積み上げてきたものを変えずに戦いたいですね」
174cm、76kg。目標は当然、W杯優勝である。それは無理としても、前回同様、1次リーグ突破への期待が高まっている。
「期待のプレッシャーはいつでもW杯にはある。とくに今回は期待値が高いと思う。個人的には、では絶対に(決勝トーナメントに)イケるかというと、強敵がいっぱいいるわけだから……。絶対、(決勝Tに)いくんだという気持ちよりは、自分たちのよさを絶対出すんだということでやっていきたい」
日本代表はキプロス戦後の壮行会でも、出発した成田国際空港でも、大勢のファンからあたたかい拍手をもらった。
岡崎は細い目に力を込めた。
「やっぱり、みんなに応援してもらって、“戦いがやっと始まるな”という感じがしてきた」
いざ決戦の地、W杯会場のブラジルへ。4年分の思いを込めた岡崎のゴールが生まれるか。日本の初戦は14日(日本時間15日)のコートジボワール戦である。