国内では評価の高い商品でも海外ではほぼ無名。どんなにいいものをつくっても、現地の消費者にまで届く提案ができなければ売れないのだ。
「利益を生むための正しい経費をかけないとダメですよ」と断言する玉木氏に、具体的にどこに経費をかければいいのかと聞くと、露骨に顔をしかめた。
「それを俺に聞くの? 本当に? 競争相手を増やしたくないんだけどな」
いや、簡単なものを一つでも教えてほしい。しつこく食い下がると玉木氏はしぶしぶ口を開いた。
「低コストでできるのは、袋の素材とデザインを工夫することだね。うちは最初、よくある茶色の袋を使っていた。それを白い和紙加工にしてデザインを変えたら売り上げが1.5倍になったよ。見た目は大事。うまそうに見えるものを買うのが当然でしょう」
正しい経費を使うには市場のニーズをとらえる必要がある。玉木氏は現在でも年間3回ほど台湾を訪れている。
抜群の行動力を武器に海外ビジネスの基盤を固めてきた玉木氏。TPPの話題にはほとんど関心を示さない。
「売ることを他人に任せると商品の値段を自分で決められなくなる。買う側が値段を決めるなんておかしいでしょう。他人任せにする人ほど農協に文句を言っている。それなら農協に(商品を)出すなよ、と思いますね」
農業といえども経営なんですよ、と付け加えた玉木氏の淡々とした表情が印象に残った。
(朝妻一洋、芳地博之、市来朋久=撮影)