日本産の野菜、果物に飛びつくのは日本人だけではない。香港には翌日到着も可能になった。輸出先進企業の取り組みから、明るい未来が見えてきた!
新潟玉木農園の玉木修氏が強調していたのは、売れるブランドをつくりつつ値段を自分で決めることの大切さだ。『日本は世界5位の農業大国』などの著書を持つ浅川芳裕氏は、国や県による海外輸出戦略は「最悪」と批判する。
「現地の小売店に補助金を出して日本の農産物を並べています。棚を金で買う。最悪のマーケティングです。小売店側は売れなくても金が入ってくるので、値づけにも陳列にも力を入れません。農産物は物流費の塊ですが、農協やその天下りの輸出団体を経由して人件費まで乗せるとありえない価格になります。日本の農産物は高いから買わないでと言っているようなもの」
商品一つ当たりに上乗せされる物流費を下げるには、取扱量を増やして航空便や船便のコンテナを埋めること。初めは先行投資と考え、物流費も販管費扱いにして商品価格に上乗せしない。現地で認知され、量が売れるようになった時点から投資の回収が始まる。これが浅川氏による「海外マーケティングの常識」だ。
「国や県の輸出担当職員は年次予算で動くのでマーケティングに必須な継続性を持てないのです。自腹を切って買ってくれるのは小売店でなく消費者であることすらわかっていません。補助金を出すくらいなら、日本国内の卸売市場に海外バイヤーを招くほうがいいのでは、と提案しているんです。バイヤーが入れば、つくりすぎで値下がりした農作物も海外に売れますよ」
自治体や農協が単発で行う輸出イベントに参加しても長期的なビジネスには結びつかないという。といって、玉木氏のように海外市場に単身で乗り込む行動力は誰しも持てるものではない。ならば、「海外に強い企業に売ってもらう」手がある。