中国の会社員も熱狂した「倍返し」
一方、堺雅人の中国での知名度は、日本で2013年前後に放送された二つの作品によって確立された。その一つが「半沢直樹」である。
2010年代には「社畜」「黒心企業(ブラック企業)」といった言葉が、日本ドラマを通じて中国にも広がった。そうしたなか、中国で2020年から第1シーズンの配信が開始された「半沢直樹」の「倍返し」は、中国の会社員が日頃抱えている職場への不満や鬱憤を代弁するものとして爆発的な人気を獲得した。
本作は中国の大手動画配信サービスBilibiliで、10点満点中9.8点(約2万1000人が評価)という異例の高得点を記録している。
二つ目が「リーガル・ハイ」だ。口の悪い弁護士・古美門研介の、圧倒的な長台詞と独特の言い回しは中国の視聴者を魅了した。「今まで見た中で最も長い台詞だ。国内にこれほどのことができる俳優がいるのかと聞きたい」といった評価もあり、豆瓣では9.4点と、こちらも異例の高得点を記録した。
こうして阿部寛は、人生の節目や社会問題に寄り添う俳優として、堺雅人は圧倒的な演技力と存在感を持つ俳優として、中国の日本ドラマファンの間で評価を確立していったのである。
「VIVANT」の評価は10点満点で6.5点
では、こうした背景を持つ二人が出演した「VIVANT」は、中国でどのように見られたのか。
2023年の第1シーズン放送時点では、同作は中国の日本ドラマファン層を中心とする話題作だった。
中国でも人気の名優、堺雅人と阿部寛の共演ということもあり、字幕組※による翻訳も行われ、コアなファンが作品を追いかけていた。
※編集部註 主に無報酬、無許諾で作品に中国語字幕をつけるコアなファンのこと
しかし、豆瓣の評価は6.5点にとどまった。これは日本国内で見られた「大作ではあるが、内容には不満が残る」という評価とも重なる。
制作費や豪華キャスト、ハリウッド映画を思わせるスケール感を評価する声がある一方、「わざとらしく難しく見せている」「最終回が不快」「後半になって失速した」といった脚本への批判も目立った。
そんなVIVANTは話題作とはいえ、あくまで中国の日本ドラマファンの間で認知されている作品に過ぎなかった。一変したのが2026年10月、第2シーズンをめぐる炎上騒動だ。
劇中に登場する中国の諜報機関シンシーのメンバーが、別班員を拷問するシーンが放送されると「中国を貶める描写だ」などとして、中国メディアから名指しで批判をされた。
