堺雅人主演の人気ドラマ「VIVANT」が中国でも注目を集めている。中国在住のライター、上海在住のえいちゃんさんは「中国には、日本軍を荒唐無稽な方法で打ち負かす『抗日神劇』と呼ばれるドラマがあるが、いま中国のSNSでは、『VIVANT』を『抗中神劇』と揶揄する声が上がっている」という。日本ドラマの中国人ファンは、この作品をどう受け止めているのか――。
東京ドラマアウォードで、主演男優賞を受賞した堺雅人さん=2017年10月26日午後、東京都港区
写真提供=共同通信社
東京ドラマアウォードで、主演男優賞を受賞した堺雅人さん=2017年10月26日午後、東京都港区

中国を熱狂させた日本のドラマ

日本で話題の「VIVANT」第2シーズンは、中国国内ではどのように受け入れられているのか。その反応を理解するには、中国における日本ドラマの歴史と、堺雅人と阿部寛という二人の俳優が築いてきた地位を知る必要がある。

中国における日本ドラマ人気に火をつけた作品の一つが、1995年に上海テレビで放送された「東京ラブストーリー」(フジテレビ)だった。これをきっかけに様々な90年代の日本ドラマが輸入され、木村拓哉、鈴木保奈美、松たか子らがアジアを代表するスターとなった。

その後、日本作品のテレビ放送枠は徐々に縮小していったが、字幕付き海賊版の流通や動画サイトを通じ、日本作品は中国の視聴者に親しまれてきた。岩井俊二監督の映画『Love Letter』も、香港・台湾といった中国語圏で人気を獲得した。

2012年に中国当局による海外ドラマの放送規制が強化され、日本ドラマはほぼテレビから姿を消すという苦境はあったものの、2013年ごろからは動画配信サイトを通じた日本ドラマの正規配信が広がった。

このような歴史を経ながら、中国では日本ドラマのファン層が形成された。そして、阿部寛と堺雅人は特別な地位を築いてきた。

中国で特別な人気を誇る阿部寛

阿部寛の場合、出演作が中国の視聴者の人生や社会問題と重なり、独自の人気につながった。

代表作の一つが、2005年放送の「ドラゴン桜」だ。本作は中国最大級のレビューサイト・豆瓣では8.9点(10点満点中)という高い評価を獲得している。

中国は学歴によって人生が決まると言っても過言ではないほど、受験競争が激しい社会である。そのなかで、阿部寛演じる桜木建二が掲げる「東大」という目標は、中国の大学入試「高考」を目前にする若者たちの心に響いた。

中国メディアも「当時このドラマを見た多くの人が励まされ、今振り返っても熱血が湧いてくる」と紹介している。ファンからも「『ドラゴン桜』で阿部寛を初めて知った。彼は道に迷った青年を励まし続けた」という声が寄せられている。

もう一つの代表作「結婚できない男」も、レビューサイト・豆瓣で9.0点という高評価を得た。阿部演じる主人公・桑野信介の、他人との距離感がうまく取れず独身生活にこだわり続ける姿は、晩婚化・非婚化が進む中国の若者の共感を得た。

そして、中国で阿部寛を語るうえで欠かせないのが、東野圭吾作品とのつながりだ。東野圭吾は中国で最も人気のある日本の推理作家の一人であり、「東野圭吾の名前は誰もが避けて通れない」とまで言われるほどの知名度を持つ。

中国の書店に並ぶ東野圭吾作品
筆者撮影
中国の書店に並ぶ東野圭吾作品

その映像化作品で人気を二分するのが、福山雅治演じる湯川学と、阿部寛演じる加賀恭一郎だ。中国のファンの間では「阿部寛以降、加賀恭一郎は存在しない」というフレーズまで定着している。阿部寛は単なる人気俳優ではなく、特定のキャラクターと一体化した存在として認識されているのだ。