「反中ドラマとして炎上した日本のドラマ」
そして「VIVANT」は一夜にして中国の一般層にも認知されることになる。
もちろん、それは傑作ドラマとしてではない。「反中ドラマとして炎上した日本のドラマ」という位置づけである。
中国SNSでは騒動後「日本ドラマファンの拠り所が崩壊した」といった投稿が大量に現れた。「堺雅人のイメージが崩れたら、これからどうやって『半沢直樹』と『リーガル・ハイ』を見ればいいのか」「阿部寛のイメージまで崩れた」と嘆く投稿も目立つ。
一方で、「私は推しに感情移入しないので冷静だ」という距離を置くファンもいれば「批判的な視点でじっくり鑑賞する」と、ファンの反応は一様ではなかったのも事実だ。
こうした騒動と並行して、「VIVANT」を「抗中神劇」と呼ぶ批判も目立つようになった。
これは中国で使われる「抗日神劇」をもじった表現である。
「抗日神劇」とは、荒唐無稽な演出によって日本軍を打ち負かす、中国の抗日ドラマを指す言葉だ。史実を度外視し、荒唐無稽な展開で敵を倒す作品が批判の対象となってきた。
中国で酷評されている「抗日神劇」
記憶に新しいのが、2025年に公開された映画『731』である。中国では2025年9月3日に行われた「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念式典」に向け、愛国・反日的な機運が高まっていた。そのなかで9月18日に公開された本作は、中国国内外で大きな注目を集めた。
しかし、ふたを開けてみると、作品の大部分は731部隊の歴史的事実を描くというよりも、収容所からの脱獄劇に費やされていた。
収容所内で花魁道中が繰り広げられたり、本来なら存在しない女性の日本将校が登場したり、脱走シーンで少年が空を飛んだりするなど、荒唐無稽な演出が中国国内でも批判を浴びた。
こうした酷評もあってか、公開から1年以上が経過した現在も、豆瓣では評価が付いていない。
日本でも「抗日神劇」をあえて見て、その荒唐無稽さを楽しむ視聴者がいるように、「VIVANT」も「抗中神劇」と評されるようになってから、中国の視聴者が戻ってくる現象が生まれた。
ただし、それは話題作を楽しもうという視聴ではない。「いったいどれほど酷い内容なのか」を確かめるための、いわば突っ込み視聴である。こうした視聴者が最初に問題視したのが、やはり中国の諜報機関「シンシー」の描写だった。

