日本を狙うサイバー攻撃が急増している。カーシェア「タイムズカー」では約660万件のアカウント情報が流出し、大和証券やヤマト運輸、大阪公立大学などでも被害が相次いだ。なぜ日本がこれほど狙われるようになったのか。海外メディアは、企業が大量に保有する個人情報や、生成AIによる攻撃の高度化などに注目している。海外報道から、日本がサイバー犯罪者にとって「割に合う国」になった背景を読み解く――。
カーシェアリングサービス「タイムズカー」の看板=2026年10月8日、仙台市青葉区
写真=時事通信フォト
カーシェアリングサービス「タイムズカー」の看板=2026年10月8日、仙台市青葉区

免許センターの行列が3倍に伸びたワケ

「これを再発行することで免許証の信用度が落ちますけれど、よろしいでしょうか」

9月末に訪れた運転免許センターの窓口で、40代の男性は係員にこう尋ねられた。男性のもとにはカーシェアのタイムズカーから、個人情報が漏えいしたとの通知が届いていたという。男性のように不安を感じ、運転免許証の再交付手続きを行う人々は少なくない。テレビ朝日によれば、男性の手続きが終わるころには、10人ほどだった列が3倍に伸びていたという。

同局の取材に応じた元警視庁警部補の小比類巻文隆氏は、再交付の回数は番号に記録されるため、免許証を汚したり盗まれたりした、つまり管理がずさんだったと受け取られかねないと説明する。

だが、信用度が落ちるのを承知で再交付を受けても、時事通信が報じたように、変わるのは顔写真と、免許証番号の末尾の数字、すなわち再交付の回数を示す数字だけだ。

タイムズカーを運営するパーク24の発表によると、同サービスから外部に送信された痕跡が確認された免許証などの画像は、約146万件に上る。画像は暗号化して保管されていたが、同社は将来復号される可能性を完全には否定できないとしている。しかも氏名や住所、生年月日などは、画像とは別に会員情報として漏えいしている。再交付で番号の末尾を変えても、これらはすでに犯罪者の手に渡っているおそれがある。

日本はサイバー犯罪の「割に合う国」

タイムズカーに限らず、サイバー攻撃が相次いだことを受け、自民党は10月9日に緊急会合を開いた。一連の攻撃は国内のみならず、ニューヨーク・タイムズなど海外有力メディアも取り上げる事態となった。党内でサイバーセキュリティの委員会を率いる平将明・元デジタル相は同じ日、日本はいま「サイバー空間の有事」のさなかにあるとまで表明した。

これまでであれば日本語の壁は高く、海外の攻撃者が日本人をだますことは容易でなかった。だが、言語の壁を軽々と越える生成AIの普及により、その防壁の効果は薄れつつある。しかも日本は、修正プログラムの適用されていないシステムの存在や、企業が溜め込んだ個人情報の多さ、そして復旧の遅さという弱みを抱えている。

ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズは専門家の見方として、狙う側から見て日本は「割に合う国」になったと伝えている。