そもそも普通の会社員が会社のお金を抜く場合、下請けや仕入れ先を使う手口がよく見られます。たとえば、発注する立場の担当者が、外注先に代金を水増しして請求させ、その差額を自分に戻させる。今年8月にも、大阪・関西万博の工事をめぐって、竹中工務店の総括作業所長が下請けに水増し請求をさせたとして、背任の疑いで大阪府警に逮捕されました。

こうした状況において、会社に国税の調査が入ると、怪しいお金の動きが浮かび上がってきます。たとえば、会社に振り込むべき代金が、なぜか社員の個人口座に振り込まれているといったことが明らかになります。そうして「このお金はどういう取引なのか」と目をつけられたら、やがて横領の事実が発覚するのは時間の問題です。

本業に打ち込む人ほど、懐は無防備

芸能人やスポーツ選手、音楽家や漫画家といった芸術家は、どうしても自分の仕事に気持ちが向きます。だからこそ、その分野で名を成すのでしょう。その一方で、お金のことは信頼できる人に全部任せてしまう。そのような構造から、第三者である国税による調査をきっかけに不正が明らかになるケースが起きてしまうと考えられます。

車田さんの言葉で印象的だったのは、「収入は2、3億円あればいい。まさか10億を超えて口座に入ってきているとは思わなかった」という一言でした。自分の作品が、海の向こうでどれだけのお金を生んでいるのか。作者本人がいちばん知らなかったわけです。

洗濯機の中の外国の紙幣
写真=iStock.com/Olga Yastremska
※写真はイメージです

本当なら、本業とお金の管理は車の両輪のはずですが、ひとつの道を極める人ほど、お金の管理を任せた人物を信じ切ってしまうのかもしれません。そして、最初は少額の横領だったとしても、時を経るごとに手口は大胆になり、巨額の横領事件に発展します。

そんな隠された事実を表沙汰にするのが、意外にも警察ではなく国税の調査官だったりするのです。

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