余分なものを削ると充実感が生まれる
彫刻家が、余分な石を削り落とすことによって、その中に隠れていた像を彫り出すように、私たちは人生から余分なものを引き算することによって、自分にとって本当にかけがえのないものを初めて手にすることができる。
足し算の人生が膨張と消耗の人生だとすれば、引き算の人生は、凝縮と充実の人生なのだ。そして、面白いことに、引き算を始めると、人はかえって与える余裕を取り戻す。あれもこれもと抱え込んで消耗しているうちは、人に与えるどころではない。自分のことで精いっぱいだからだ。
だが、思いきって荷物を下ろし、本当に大切なものだけに絞り込んだとき、心にゆとりが生まれる。そのゆとりが、目の前の大切な人に、惜しみなく時間と心を注ぐことを可能にする。引き算とは、何かを失うことではない。
余計なものを手放すことで、自分にとって本当に大切な人や時間に、より深く向き合えるようになることだ。
人生で大切なものは何かと問われたとき、私は躊躇なく「具体的な人間関係」であると答える。うんと遠くにいる他人ではなく、自分の家族や職場の同僚、そして損得抜きでつき合える数人の友人など、自分のすぐそばにいる人たちを、自分と同じように大切にしていくことだ。
深く付き合える人間は「5人」まで
多くの人はお金や名誉を成功の基準と考えがちだが、それらはどこまで突き詰めても実体のない幻想にすぎない。人間が本当に深いつき合いができるのは、せいぜい5人以内である。
私が「Aボックス」の人脈と呼んでいる、自分がいざというときに無条件で借金の連帯保証人になれるような関係、あるいは自分が本当に生活に困窮したときに損得勘定抜きでお金を「貸してくれる」のではなく、「くれる」ような真の友人は、5人も思いつけば十分すぎるほどだ。
現代はSNSなどで1000人の「友達」と簡単につながれる時代だが、それは錯覚であり、自分がトラブルに巻き込まれたときに本当に助けてくれるわけではない。
もしそのような希薄なつながりに縛られて疲弊しているのなら、いっそアカウントを消去して、本当に大切にすべき30人程度に絞り込んで登録し直したほうが、はるかに健全である。
人間は弱く、不完全な生き物だ。だからこそ互いに弱さを見せ、困ったときに支え合える数人がいるかどうかで、人生の充実度は大きく変わる。
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