世界の時価総額ランキングの大きな変化
1989年当時、世界の時価総額ランキング上位50社の中に、日本企業は32社入っていました。日本がいかに元気で豊かだったかが分かります。しかし、見てほしいのは、そこではありません。
当時の世界の大企業は、金融機関を除けば、大量生産品を不特定多数の人に販売する製造業が中心でした。日本が強かった時代、世界の経済は製造業が動かしていたのです。
ところが、2026年3月末の景色は一変しています。トヨタがランク外となり、日本企業が消えました。日本がいかに衰退したかを感じて寂しいですが、ここでもご覧いただきたいのはそこではありません。
トップのエヌビディア以下、上位に並ぶのは、1989年当時は影も形もなかったデジタル技術で急成長した企業です。
自動車のテスラや、ディスカウントストアのウォルマートのように、伝統的な産業に属す企業もあります。しかし、そうした産業でも、上位に並ぶのは、デジタル技術で事業構造を変え、データ、ソフトウェア、プラットフォームを使って稼ぐ仕組みを作った企業です。
日本が停滞を続けるうちに、世界は大量生産型の製造業が引っ張る時代から、デジタル技術が価値を生む時代へ移ったのです。世界が全速力で走っている時に、日本だけが過去の成功体験を眺めながらゆっくり歩いていれば、相対的な順位が下がるのは当然です。
一生懸命働いても生活が楽にならない理由
「毎日これほど一生懸命働いているのに、なぜ生活が楽にならないのか」
この感覚の背景には、日本経済の地力ともいえる潜在成長率の低下があります。産業構造の転換に乗り遅れると、「国全体の稼ぐ力」が落ち、生活が苦しくなっていくのです。
潜在成長率は、それぞれの国が持つ、無理なく持続できる経済成長の基礎体力です。意図的な景気対策や一時的な輸出増加を取り払った時、地力としてどのくらい成長できるかを示します。
高度経済成長時代の日本には、毎年10%を超える勢いで成長を続ける力がありました。1980年代でも、潜在成長率は4%を超えていました。特別な景気刺激策を打たなくても、国全体の経済規模が毎年4%ずつ自然に大きくなる。そういう強烈な上昇気流の中に、日本人はいました。
しかし、いまの日本の潜在成長率は、0%台半ばから、推計によってはほぼ0%近くまで落ち込みました。日本経済の成長エンジンは、ほとんど推進力を失い、過去の慣性でかろうじて動いている状態です。


