介護に親身になるほど減っていく売上
老人ホームの収入の一つに介護保険報酬というものがあります。この報酬は、要介護度が軽い人には安く、重い人には高く設定されています。たとえば、老人ホーム側が国から受け取れる要介護1の入居者の1カ月間の介護保険報酬は15万円、要介護5の入居者の場合は30万円といった形です。ちなみに、介護保険報酬は、サービスごとに様々なものがあります。
ご興味があれば、ネットで「介護保険サービスコード表」と検索してみてください。
老人ホームが入居者のために様々な介護支援をした結果、要介護5の入居者の介護度が要介護4になった場合、ホーム側が受け取れる介護保険報酬は30万円から25万円に減ってしまいます。
逆に、何も適切なことをせずに要介護1の入居者が要介護4になれば、介護保険報酬は15万円から25万円に増えます。つまり、老人ホームは入居者のことを考えて、親身になって懸命に取り組むと入居者の状態が改善し、要介護度が軽くなるほど売上が減っていく仕組みになっているのです。
もしもあなたが老人ホームの経営者だったら、いったいどのような指示を出すでしょうか?
「笑顔あふれる」「入居者のために」も危険
「入居者を重度化させて介護保険報酬を増やしなさい! 一定以上の売上は職員に還元します」と言いますか? それとも「入居者と懸命に関わり、要介護度を改善させてください。ただし、売上が下がるので賃金を下げていいですか?」と言うでしょうか。
老人ホームの経営とは、このような二律背反の中での絶妙なバランス感覚がなければ成り立たないものなのです。したがって、パンフレットやホームページに、「寄り添う」「幸せ」「笑顔あふれる」「たくさんのありがとう」「入居者のために」とかといった美辞麗句ばかりが並んでいる老人ホームは、このトレードオフの実態について真剣に取り組んではいないというのが私の考えです。
もし、真剣に取り組んでいるならば、「綺麗事ばかり並べると嘘になる」ということに、経営者が自ら気づき、第三者に向けてどのように表現するべきか悩みぬくはずだからです。どのような老人ホームにも、メリット、デメリットがあります。100点満点の老人ホームは世の中に存在しません。
美辞麗句で見てくればかり気にしている老人ホームよりも、多少、野暮ったいところがあっても、正直な経営者の気持ちが感じられる宣伝文句を謳うホームのほうが信用できると思います。
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