自分の口に合った食べ物が必要

気をつけなければならないのは、私の好きな塩鮭や鰯の丸干しのような塩乾物で、薄塩と言っても、こういうものはじっくりと塩が染み込んでいるから、油断がならない。こう言うものは塩が利いているからこそ、旨いのだと思う。

梅干などもその通りで、塩がたっぷり使ってあるから、梅干の風味が生きるのだろう。近頃、流行りの、必要以上に塩分を減らした梅干なんて、旨いと思ったことは一度もない。味噌、醤油にしてもそうで、減塩醤油のような得体の知れない味には困って了う。

減塩などと言うから、つい油断をして使い過ぎて了うことになるので、昔ながらの本物の味を、ほんのちょっぴり愉しめば好いと思うのである。

小鉢の醤油をスプーンですくう写真
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
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齢をとれば、それだけ味覚も衰えるのは仕方のないことである。だからこそ、自分の口に合った食べ物が必要なのだと思う。これが食欲を衰えさせない秘訣だと私は思うがどうだろう。

汁物はつくらず、とにかくよく噛む

食事のとき、私は殆ど汁物はつくらない。味噌汁などは一週間に一度つくるかつくらないかである。大好きな素麺を食べるとき以外は「おつゆが欲しい」と言ったこともない。

これは塩分の摂り過ぎに気をつけているというよりも、汁物があると、つい、ものを噛まずに、飲み込んでしまうからである。だから私は、この頃は、あのお茶漬けというのをあまりやったことがない。

とにかく、私はよく噛む。よく噛むと、食べ物が美味しくなる。ほんとうのものの味が分かって来る。よく噛めば唾液もたくさん出るから、汁やお茶の助けを借りずに済む。消化吸収もいいに違いない。

人間の舌の表面には無数の乳頭というものがあって、さらにその中には味蕾があって、これを刺激することによって、味覚を感じるのだそうである。

こういうことは後で知ったことなのだが、私はよく噛むことで、この味蕾を上手に刺激しながら、自然に美味を味わっていたようである。

それにしても、味蕾とは学術用語とは思えないが、何という味のある言葉ではないだろうか。