鏡の前で自分に問うジョブズの習慣
ただし、道は坐禅だけではありません。ビジネス界にも、内なる自己との対話を実践していた偉人がいました。アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズです。
ジョブズが禅に深く傾倒していたことは、よく知られています。彼は毎朝、鏡の前に立ち、そこに映る自分に向かって問いかけていたといいます。
「今日やるべきことは何か。それは本当に自分が望んでいることか」
ここで驚くべきなのは、ジョブズほどの人物でさえ、「本来の自己」と対話する時間を必要としていた、ということです。
裏を返せば、そうでもしないと私たちは簡単に「本来の自己」のことを忘れてしまうのでしょう。心のメタボは、放っておけばすぐに戻ってくる。だから毎朝、少しずつ脂肪を落とす必要があるのです。
仏様の前で自分を偽れる人はいない
私が坐禅とならんで大切にしているのは、仏壇の前に座る時間です。
なぜなら、仏様や先祖を前にしたとき、自分を偽れる人はいないからです。手を合わせ、目を閉じていると、日々の暮らしの中でまとわりついてきた余分なものが、少しずつ剥がれ落ちていくのを感じます。
肩書きも、見栄も、社会的な役割もなく、ただ素のままの自分が、そこに座っているのです。仏教では、これを「露」の状態といいます。
自宅に仏壇がない方は、大切な人の写真でも、心から尊敬する人の本でも構いません。そこに行けば嘘がつけない、飾らなくていい、露になれる。そんな場所を、暮らしのなかに1つ作っておきましょう。その上で、自分に問いかけるのです。
「私は今、ありのままの自分が望む人生を歩いているだろうか」と。
「本来の自己」と対話を重ねていくと、自分以上でも自分以下でもない、ありのままの生き方が身についていきます。それは、やがて訪れる旅立ちの日に、「ああ、これでよかったのだ」と納得する生き方。あなたの心に住まう仏様が、納得する生き方なのです。

