慢性炎症が疲れを生む5つのプロセス
「疲れと免疫はつながっている」――この事実が、すべての出発点です。そしてそれをつなげるのが「炎症」。ここで、慢性炎症が疲れを生み出す具体的なプロセスを、5つの側面から見てみましょう。
①脳への「休め信号」が止まらない
炎症が慢性的に続くと、免疫細胞が放出する「サイトカイン」が脳の視床下部(体温・食欲・睡眠の司令塔)に継続的に作用します。その結果、強い倦怠感・集中力の低下・食欲不振が持続します。
「ベッドから出られない」「頭がぼんやりして何も考えられない(ブレインフォグ)」という慢性疲労症候群の典型的な症状が、このメカニズムが関与する可能性があります。ただし、すべての症状をこのしくみだけで説明できるわけではなく、原因はまだ十分に解明されていません。
②エネルギー工場が傷つく
細胞内でエネルギー(ATP)を生み出す「ミトコンドリア」は、慢性炎症や酸化ストレスの影響を受けます。過剰な活性酸素などでミトコンドリアが傷つくと、エネルギー産生の効率が低下することがあります。
エネルギー代謝の異常は、少しの身体活動や頭を使う作業のあとに症状が悪化する「労作後の症状悪化(PEM)」に関わる可能性があります。ただし、PEMの根本原因はまだ解明されていません。
強い痛みや不快感として感知
③痛みと過敏が増幅する
炎症を引き起こす信号物質の「サイトカイン」は、痛みを感じる神経を過敏にすることがあります。普段なら気にならない刺激が「激しい痛み」として感じられる場合があります。
具体的には、炎症性サイトカインが末梢の痛みを感じる神経の反応性を高めるほか、脊髄・脳での痛み処理に影響することがあります。
このうち、脊髄や脳などの中枢神経で痛みへの反応が増強する現象を「中枢性感作」といいます。通常なら痛くない刺激が痛く感じられたり、弱い痛みが強く感じられたりすることがあります。
全身の痛みや刺激への過敏さの背景には、こうした神経の変化が関わる可能性があります。ただし、音や光への過敏さを、痛みの中枢性感作だけで説明することはできません。
④自律神経が乱れる
炎症が自律神経系に影響することもあります。慢性疲労症候群では、立っていると動悸やめまいが出る「起立不耐症」を伴う場合があり、その1つが体位性頻脈症候群(POTS)です。原因は多様で、炎症だけに由来するとは限りません。
⑤睡眠の質が落ちる
①や③でも登場した「サイトカイン」は、睡眠にも関わります。サイトカインは通常の睡眠調節にも必要な物質ですが、炎症の程度や時期によっては睡眠のリズムや連続性に影響することがあります。
その結果、途中で何度も目が覚めるなど、睡眠が十分に取れなくなることがあります。ただし、慢性疲労症候群の「眠っても回復した感じがない」という症状は、睡眠検査で異常が見つからなくても起こり得ます。
「十分な時間寝ているのに疲れが取れない」場合には、睡眠の質に加え、睡眠障害やほかの病気の関与も検討する必要があります。
これら①〜⑤は複合的に絡み合い、全身の倦怠感や痛み、頭がさえないなどの疲れを生み出すことがあります。そして厄介なのは、これらの症状が互いに悪循環を引き起こすという点です。
疲れが睡眠を乱し、乱れた睡眠がさらに炎症を助長する。それにより痛みが起こり、眠れなくなる――この悪循環により「休んでも回復しない疲れ」から抜け出せなくなります。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


