「急性炎症」と「慢性炎症」の違い
少し想像してみてください。蚊に刺された箇所が赤く腫れる。転んで膝をすりむいたら熱を持ち、ジンジンと痛む――これが「炎症」です。免疫細胞が傷や外敵の侵入を感知して集まり、修復・戦闘モードに入っているサインです。
炎症は持続する期間や経過によって、次の2種類に大きく分けられます。
【急性炎症】――短期間に起こる反応
ウイルスや細菌が体に入ってきたとき、その名の通り素早く起動して敵を撃退し、戦いが終わったら速やかに撤収します。風邪で高熱が出て、数日後にすっきり回復する。
それが急性炎症が正常に機能し、完結した状態です。体を守るための「正しい防衛反応」です。
【慢性炎症】――長く続く炎症
慢性炎症では、免疫細胞の活性化が長く続きます。発熱や血液検査の異常がはっきり出る場合もあれば、目立った症状や検査異常が乏しい場合もあります。
心の奥底でくすぶる怒りの炎のように、エネルギーが静かに消耗し続ける。「なんとなくだるい」「休んでも回復しない」という疲れの正体のひとつが、この慢性炎症です。
炎症は脳に影響を与える
さらに驚くべき事実があります。炎症は、脳に影響を与えるのです。
インフルエンザにかかったとき、高熱が出て「体を起こす気力すらない」状態になった経験はありませんか? あの「何もできない感覚」は、ウイルスそのものの影響に加え、免疫反応も関わっています。
免疫細胞が放出するサイトカインなどの信号が、血液や神経を介して脳に伝わり、活動や食欲を抑え、休息を促す反応を起こすのです。
これを「病気行動(Sickness Behavior)」と呼びます。急性の感染症なら、ウイルスが消えるとともにこの信号も止まり、また元気を取り戻します。
ところが慢性炎症では、この「休め信号」が脳に送られ続けることがあります。「検査では異常なし」なのに体が動かない。「やる気はある」のに起き上がれない――。その経験の背景に、このメカニズムが働いている可能性があります。

