位置情報があれば生存確率が格段に上がる
この位置情報の送信機能は、万が一のときにふたつの役割を果たしてくれる。
まずひとつは「家族が異変に気づく」こと。ヤマレコの「いまココ」サービスを使うと、家族や友人がスマホから登山者の現在地をリアルタイムで確認できる。「そろそろ下山しているはずなのに、まだ山の中にいる」「位置が長時間動いていない」など、登山者の異変に家族が気づいた時点で、警察への相談や救助要請を迅速に行なえるようになる。
もうひとつの役割は「救助隊が直接動ける」こと。長野県警など、ヤマレコと協定を結んでいる警察・消防はSAGASU(遭難者情報照会システム)を使って直接ヤマレコのデータベースにアクセスし、遭難者の直近の位置情報を確認できる。登山者が110番に通報したものの、電波状況が不安定ですぐに切れたりケガなどの影響でまともに話ができなかったりという場面でも、位置情報が残っていれば救助隊はその地点に向かうことができる。
救助隊の側から見ると、位置情報の有無によって作業量は格段に変わる。「どこにいるかわからない人を捜しながら進み、助ける」ことと「居場所が確実な人を助けに行く」ことは、必要な人員も時間もまったく異なる。位置情報があると、当事者の生存確率を上げるだけでなく、他の遭難者への救助リソースを確保することにもつながる。
「山頂だけ機内モードオフ」は意味がない
機内モードをオンにする理由は大きく分けてふたつあるだろう。バッテリーの消費を抑える目的と、ネットや通信手段から離れたいという意思だ。
バッテリーについては先にも触れたが、少し誤解がある。完全な圏外にいる場合、機内モードにするかどうかでバッテリーの消費は大きくは変わらない。消費量が多いのは「電波アンテナが1本だけ立っている状態」だ。
遭難者の捜索データを見ると、山頂付近の1点だけが通信に成功しているパターンがある。歩行中は機内モードをオンにして、山頂でのみオフにして通信を再開しているのだ。このような登山者の軌跡を見ると、位置情報がまったくないか、山頂までの軌跡しか残っていない。そこから東西南北どこへ向かったのか、しらみつぶしに捜すしかない。人海戦術で危険な斜面を含めて捜すしかない。それでも発見されるかどうかわからないのだ。

