好きなものを楽しく読むのがいちばん重要

ただ、読書は今日読んで明日すぐに効果が出るようなものではない。中長期的に効いてくる。

また、「朝の読書」運動が始まるさいに理論的支柱となったジム・トレリースは、その後、PISA(学力を「国際比較」する学習到達度調査)の読解リテラシーのスコアと「夢中になって読む」(楽しみのための読書)経験に相関が高いことを強調している。

PISAの評価枠組みでは「読書へのとりくみ(エンゲージメント)」を構成する重要な要素として、この「読書への関心と楽しさ」にくわえて「自分が何を読むかをコントロールしている感覚」も挙げている。

ムリヤリ興味がないものを読まされても、enjoyableな体験にはならない。トレリースは朝読のような「自由読書」の推進派だが、自分で好きに、興味のある本を選んで読むからこそ夢中になれる。

寝転んで本を読む子ども2人
写真=iStock.com/Jelena Stanojkovic
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ところが日本では「古典・名作を読むべき」「歯ごたえのある文学を読むべき」「教養的な読書をするべき」「社会問題を扱った新書、ノンフィクションを読むべき」といった意見が根強くある。実際にそれを実践している人間はごく少数であるにもかかわらず、だ。

子ども自身が自発的に「大人が子どもに望むような読書」をやっているなら別にいい。けれどもそうでない場合、子ども・若者に強制したところで、期待されるような学力の向上は起こらないだろう。好きな本を自由に読ませたほうが読解力は上がると思われる。

「マンガが読解力を低下させる」は本当か

マンガでも読解力は上がるのか。この点は、年や国によって結果が一致していない。

昭和31年(1956年)に行われた文部省の全国学力調査の報告書では、小学校の読解問題(とくに説明文)の成績がわるかったのは「正確、確実に読みぬく態度、能力が足りない」からであり、その理由は「まんが、ダイジェスト、その他の軽い読物を中心とする読書状況によってだんだんと破壊されている」と、「マンガが読解力を低下させる」と否定的にとらえていた。

もっとも、ほんとうにマンガを読むことと読解力に負の相関があるのかといえば、根拠は示されていない。

マンガ以外の読書に関しては、よく言われているように「もともと言語能力が高い子どもほど、本をよく読む傾向がある」。逆もしかりである。

つまり仮に「マンガを読んでいることと読解スコアに負の相関がある」という結果が出たとしても、「マンガを読むことにマイナスの効果がある」可能性と「読解スキルがないからマンガしか読めない」可能性がある。前者ならマンガは読まないほうがいいし、後者なら何も読まないよりはマンガを読んだほうがいいという話になる。