もちろん、これに対して、アメリカでドル資金を調達し、そのままドルで投資を行う場合、ドルで調達してドルで投資するだけだから円安圧力にはならないという反論がある。しかし、すべてをドルで借りてドルで投資することは無理な気がする。日本企業がアメリカ国内で十分な担保があれば低い金利でドルを借りることができるかもしれないが、さらに88兆円の借入を増やせるほどの担保はないだろう。

投資したものが担保になるという反論があるかもしれないが、通常、投資した額の数割引きした額しか担保にはならない。日本の資産を担保に円建てで借りてドルに換える場合は、最初に述べたのと同じで円安圧力になる。

確かに、資金調達から投資までをすべてドルで自己完結させれば円安圧力にはならないが、金額が大きすぎるので、それは無理だと私は思う。

関税・対米投資・円安批判という「無理難題」

トランプ氏が日本に関税をかけ、5500億ドル対米投資要求し、かつ、円安にするなというのは無理難題である。「あれー、ご無体な」と言いたいところである。

以上は、円ドル・レートは円とドルの需給で決まるという簡単な経済理論というか、常識に基づくもので、エコノミストなら誰でも賛同してくれるだろう。しかし、この理屈で、無理なので3つのすべてはできませんと説得しようとしても、トランプ大統領はおろか、専門性があると自認しているはずのアメリカ政府高官の誰も説得できないだろう。本当は専門性がないのか、あったとしてもトランプ氏が嫌がる、または理解できないことを言う気はないだろう。

どうしたら良いのか。まずは、第1は、単純な真実に固執することである。日本の右から左までの識者が、ベッセント財務長官に批判されたから日本政府がダメだというような批判をするのは止めるべきだ。日本の識者は、グローバリズム嫌い、外国嫌い、金持ち嫌いの方が多いと思うのだが(私はグローバリズムや外国は好きである)、なんでベッセント長官のようなグローバリズムの手先の大金持ちの発言を欣喜雀躍して受け入れるのだろうか。高市政権が嫌いなら、アメリカに頼らず、自分の理屈で批判すべきだ。

片山さつき財務大臣を訪問するスコット・ベッセント米財務長官
片山さつき財務大臣を訪問するスコット・ベッセント米財務長官(写真=The White House/アメリカ合衆国連邦政府/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

私は、ドイツの右翼AfD(ドイツのための選択肢)がなぜ親ロシアなのかが理解できない。右翼なら、第2次大戦ではアメリカに軍事援助されたソ連に負けたが、今度は勝ってやると言わないのが不思議だった。だが、日本でも不思議な人たちは多いようだ。

第2は、時を待つである。単純な真実に固執しても何にもならないと言われればその通りだが、アメリカも単純な真実に気付いてくれば、日本はすぐさま方針転換できる。