備蓄を増やす一方で水田を減らす
食料安全保障の最大の要は「農地資源」である。ところが日本は1961年以降、中国地方の面積を上回る340万haもの農地を失っている。
最大の要因の一つが、減反政策だ。日本は1970年以来、半世紀にわたり「補助金を出して主食用のコメ作りを減らす(減反)」という異常な政策を続けてきた。需要が減っても、米価を高く維持するためだ。コメ作りを制限され、代わりの転作作物も見つけられない水田(特に条件の悪い中山間地域など)は、次々と耕作放棄や転用されていった。
減反開始前(1969年)に344万haあった水田面積は、現在230万haへと3割も減少している。畑の減少ペースをはるかに上回る猛スピードで、日本の水田は姿を消しているのだ(図表1参照)。
本来、水田には「水資源の涵養」や「洪水防止」といった多面的な国土保全機能がある。それにもかかわらず、農政は「水田を水田として使わないこと(減反)」に補助金をばらまき、結果的に水田そのものを消滅させてしまった。
政府は今回、備蓄米買戻しにあたって「食料安全保障」を高らかにうたっている。しかし、実際には有事が起きれば国民を養うことができない水準まで、生産基盤である水田を自らの手で破壊し続けているのだ(参考記事)。私が許せないのは、この二枚舌だ。
放出米の約98%がJA系統へ
2025年3~4月当時、江藤大臣時代の備蓄米放出の経緯を振り返りたい。
江藤氏は米価が上昇しても備蓄米の放出に抵抗していたが、石破官邸に要求されてしぶしぶ放出に応じた。だが、その際に、放出しても米価が下がらない仕組みを二つ組み込んだ。
一つは、消費者にコメを届けるのが放出の目的なら、消費者に近い卸売業者や小売業者に売却するのが筋なのに、集荷業者に売り渡したことだ。集荷業者として圧倒的なシェアを持つのはJA農協(中でもその全国組織であるJA全農)である。JA全農は31万トンのうち94.8%を買い受けた。JA福井県など県レベルのJA農協を含めると、ほぼ全量(97.7%)がJA農協系統に売却された。商人系の集荷業者の全国組織である全集連(全国主食集荷協同組合連合会)の買受け量は4316トンで、わずか1.4%に過ぎない(※1)。
集荷業者が消費者から遠いだけではない。備蓄米の放出による米価低下に反対していたJA農協に売り渡したのである。3~4月に売却された備蓄米がすべて消費者や実需者に届いたのは11月だった(※2)。この遅れは、あらかじめ想定できたはずだ。
もう一つの仕組みは、備蓄米を放出しても1年以内に買い戻すという特例付きの売却にしたことである。これでは市場への供給量を増やすことにならない。世論の批判を受けて1年を5年に延ばした。しかし、今回、昨年3~4月に売ったものを9月に買い戻すなら買戻し期日が半年延びたに過ぎない。もっと価格が下がるのを待ってから26年産米を買い入れた方が財政負担は少なくて済むのに、わざわざ史上最高値をつけた25年産米を指定して買い戻すことにしたのである。
※1 令和7年3月~4月までの「政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの契約数量」の合計より
入札実施日:令和7年3月10日から12日
入札実施日:令和7年3月26日~28日
入札実施日:令和7年4月23日~25日
※2 「政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの販売数量等報告結果」より


