10年後の自分について語り続けてみると……

卑近な例で恐縮だが、私は大学時代にトム・クルーズ主演の『トップガン』を観て、唐突に「トム・クルーズになりたい!」と思ってしまったことがある。ヘインズのTシャツと革ジャンを買い込み、残念ながらそれだけではトム・クルーズになりきれなかったので、「やっぱりバイクが必要だよな」と思うに至った。すると不思議なことに、それまで全然気にしていなかったバイクの通り過ぎる音に、毎回反応して振り向くようになった。

これは「選択的知覚」と呼ばれるものである。我々は無意識のうちに、「これは自分に必要な情報」「これは必要ない情報」と分けて情報処理をしている。つまり、憧れやビジョンを意識すると、より確実でスピーディに有益な情報を手に入れることができるようになる。反対にビジョンがない人は、「落ちている小判に気がつかない」状態なのである。

まずはビジョンを描くこと。しかも、ビジョンは、「1200万画素の精密さ」で描くことが大事である。

具体的には(1)素材を集める、(2)人に話してビジョンを構築する、(3)ビジョンを文字か絵にするというステップを踏むとビジョンは描きやすくなる。素材集めの段では、次のような問いをたててみる。

●この10年間、何に一番駆り立てられてきたか?
●何をしていたときが一番ワクワクしたか。
●何のプロジェクトに一番燃えたか。
●周りからのどんな言葉が、仕事のやりがいを高めたか?
●どんなときに使命感を感じたか?

こうした問いに答える課程で、自分の価値や手にしたいことを明確にしていく。次のステップは、いろいろな人にそのビジョンを話すことだ。