変化するには2つの方法がある。「一気に変化する」方法と、「少しずつ変化する」方法である。

比喩として、水恐怖症(water phobia)の例を挙げてみよう。水に近づくことに極端に恐怖を抱く人を水に慣らすためにはどうしたらいいだろうか。

荒療治としては、泣こうが喚こうが羽交い締めにし、むりやりプールサイドまで連れていく方法がある。しかし水に突き落とすようなことはせずに、水辺に身を置かせる。すると、最初は嫌がっていても、「怖いことは起こらないのだな」と落ち着いてくる。脳の中で「水=怖くない」というネットワークができあがるからだ。これが「一気に変化する」方法。

もう1つは、毎日一歩ずつプールに近づいていくように、「少しずつ変化する」方法だ。1歩ずつならば脳の中の恐怖アラームも作動しないので、ひと月も過ぎたころには、自然とプールサイドに立っている自分に気づくことだろう。

ビジネスの場合には、「年商100億円」が目標ならば、一挙にそこに辿りつこうとするのではなく毎日少しずつ近づいていく。「年商100億円の企業を率いるに相応しい自分」になるためには、現場からリアルタイムで入ってくる生きた情報をフィードバックして真摯に受け止めながら次にどうすればよいか向き合う。日々の小さな習慣改革も、365日継続すれば1年後には大きな変化になることは間違いない。

もう1つ、変化に必要なのは強い欲求(desire)とビジョンである。

そもそも、人が変化を遂げる動機のもとには、「何かを手に入れたい!」とか、「何かを失いたくない!」という強烈な欲求がある。別の表現をすれば「ポジティブ追求型」か「ネガティブ回避型」のどちらかだが、すべての動機の源泉は欲求にこそある。この源泉を大切に扱うことが、将来的なビジョンを描くためには必要である。

「願いはノートに書きだすか、人に話せ」とよくいわれるが、確かにこれには意味がある。人は自分に必要な情報を五感をフル回転させながら収集している。ということは、憧れ(longing)を自ら意識して生活しているかどうかで集まってくる情報にも差が出てくるということだ。