たとえば、「10年後の自分について、1時間ノンストップで語りまくる」という手段がある。これは、かつてコーチングの勉強をしていたとき、アメリカの国際コーチ連盟の研修会で実際に私も試してみた方法である。2人1組になって、互いの将来について語る。なぜ1時間なのか、なぜノンストップなのか。

通常、人は夢について1時間も語れない。しかし「絶対に1時間」と決まっていれば、どうしてもディテールに凝らざるをえなくなる。「将来会社を立ち上げたい」だけではなく、「○○の情報を提供するIT会社で、スタッフは50人。会社は何階建てのビルに入っていて、○○の立地で、外観は○色で、フロアはどれくらいのスペースで、自分の仕事場は窓に面していて机はウッディ調、壁には印象派の絵がかかっていて……」というように、より詳細に映像としてイメージする。これが「1200万画素」のイメージである。

しかもそれをノンストップで語る。これは自分の本能に忠実になるためだ。人はゆっくり話すと、どうしても左脳のチェックがかかってしまう。「これはできそう」「これはできなさそう」というように、現実的かそうでないかを理性的に判断してしまうのだ。自分の夢が制限されないためには、ハイスピードにして、右脳のひらめきを全開にして喋り倒す必要がある。

変化を起こす「魔法の問い」

脳は自分が思っていることでも、1度外に出さないと自覚できない。人に話すことで初めて、「自分はこう思っていたのか」と整理されることがある。夢も同じことだ。口にして初めて「そんな願望を自分は抱いていたのか」と知って驚くことは少なくない。

そして最後に、ビジョンを絵や文字に「書く(描く)」こと。それを頻繁に見直すことで、ビジョンは自分の中により強く染み込んでいくだろう。欲求やビジョンを明確に持つことは、「長期的な変化」に向けた自分なりのシナリオを持つことといえる。

先にも述べたが、自分ひとりで変化を起こすのは難しいことだ。コーチにつくことが理想ではあるが、自分自身への質問力を鍛えることでもかなりの効果が期待できる。日ごろ、自分自身に何を問いかけているかで人の行動は決まるといって過言ではない。

自己質問を起こす際、人はともすると「過去否定形」の質問をしてしまう傾向がある。「なんで社長に認められないんだろう」「なんで給料がこれしかないんだろう」など、「過去否定形」の質問が多いと、いつまでも自問自答を繰り返すパターンになりがちである。

自分のアイデンティティを守るために自分を正当化したいという心理がはたらくと、自分に都合のよい答えを引き出すことになってしまう。たとえば、「なぜ上司はあのとき、あんなことをいったのだろう」という問いに、「あの人は、そもそも部下を理解しようという気がないんだ」など、その場しのぎの答えを導き出してしまうようなことが起こる。このような問いを繰り返していると、次第に負のスパイラルに巻き込まれていく。しかもそのことに、大抵の人は気づかない。