並行輸入品が招いた値崩れ
ただし、アジアで足踏みしている日本ブランドもある。
今年5月、資生堂の第1四半期決算説明会。経営陣は中国およびトラベルリテールを含む事業のなかで、日焼け止めブランド「アネッサ」が在庫の最適化と市場の正常化を図る「調整期」にあり、売上高が大幅に減少したと説明した。
海外で苦戦するのは、価格統制力の低下に原因がある。正規ルート以外の並行輸入品が流れ込んだことで、値崩れが始まったのだ。安値の品があふれれば、長年築いたブランド価値も削られていく。
とはいえ、品質や人気が落ちたわけではない。同四半期、アネッサの国内売り上げは2桁の伸びを記録した。冒頭のプライスさんも、お気に入りの日本製日焼け止めトップ2の1つに、アネッサ パーフェクトUV スキンケアミルクを挙げる。
やや高価だが、ウォータープルーフで軽く、滑らかで絹のようだと彼女はいう。もっとも、日本製一般に、耐水品質はオーストラリア製に劣るとした。汗をかきにくい日本人に合わせた作りで、だからこそライトな塗り心地につながったとの分析だ。
1時間に2人が皮膚がんで亡くなる国
アジアから欧米へ目を向ければ、日焼け止め製品はまだ伸びる余地がある。
テキサス州オースティンのプールサイドに足を運べば、まるで香水のように1プッシュだけ、日焼け止めをスプレーする人々の姿がみられる。
皮膚科医のアデウォレ・アダムソン氏は、米公共ラジオ放送局のNPRに、「ほとんどの人は、十分な量を使っていないんです」と指摘する。ベタつき、油っぽい質感を嫌ってのことだろう。
だが、アメリカでは1時間に少なくとも2人が皮膚がんで亡くなっており、国内で最も多いがんも皮膚がんだ。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、毎年610万人の成人が、皮膚に盛り上がったしこり等ができる基底細胞がんや扁平上皮がんの治療を受けていると推計する。
こうした皮膚がんの多くは紫外線の過剰な曝露が原因で、日焼け止めを使うなどでリスクを下げることができる。シンプルな予防策がありながら、どこかで予防策が機能していない。
アダムソン氏は、わずか数プッシュという使用習慣に加え、「一部の化学系日焼け止めは、本来必要な広いスペクトルに対応しておらず、UVA線を十分に遮断できていないのです」とも述べている。
UVAは肌の中間層(真皮)まで届き、肌老化を引き起こすとされる紫外線だ。米国がん協会は、UVAを含む紫外線一般について、「皮膚細胞のDNAを損傷する」可能性があり、「がんのリスクを高めることもある」としている。

