「顔データが流出したら…」という不安

筆者が主宰する「鉄道トレンド総研」が258人を対象に行った調査では、顔認証改札を「使いたくない」と答えた人は45.3%にのぼった。理由を紐解くと、「顔データ」という個人情報提供への抵抗や、データ流出、誤認証などへの不安が目立った。

もちろん、セキュリティや個人情報の扱いは鉄道会社側でもしっかりされているだろう。しかし「私の顔写真をどうぞ」とすんなり提供できる人は、そう多くはないのかもしれない。

実は、JR東の本社ビルでも、一部に顔認証ゲートが導入されているという。登録をしておけば、社員証をかざすことなくゲートを通れる。「なんて便利なシステム!」と思いきや、登録は希望制で、顔のデータを登録することの抵抗感から、参加していない人もいるという。

顔認証が日本に広く普及するには、なかなか高いハードルがありそうである。

ウォークスルーの本命は「UWB」

ウォークスルー改札の導入を目指すものの、顔認証は思ったほど日本人に受け入れられそうにない。では、どうすればいいか。

「顔認証のほかに、私たちが採用を試みているのが『UWB』という仕組みです」と言うのは、JR東日本マーケティング戦略部の平井辰徳マネージャーだ。Suicaに携わること約20年、まさにSuicaとともに歩んできたベテランだ。一体、UWBとは何なのか。

「UWBとは『Ultra-Wideband(超広帯域無線)』と呼ばれる無線通信技術のことです。それが搭載されているスマートフォンの位置を、センチメートル単位で把握できます。『AirTag』と呼ばれる、紛失したiPhoneを探す機能がありますが、あれにもUWBが使われています」(平井さん、以下同)

改札とスマホの距離を把握するUWBの技術
写真提供=JR東日本
改札とスマホの距離を把握するUWBの技術

つまり、Suicaの情報が入ったスマホを持っているだけで、UWBを通して認証され、改札を通れるという仕組みなのだという。わざわざスマホを取り出す必要はなく、カバンの中に入れたままで、改札を通ることができる。

スマホで通話したままでも改札を通過できる
写真提供=JR東日本
スマホで通話したままでも改札を通過できる