小児外科は「腸重積だけ」でいいのか
臨床教育なんて絶対に必要だから、学生は出席して当たり前という感じだが、実際の出席率はかなり悪かった。理由は二つ。まず、医学書に書いてあることを改めて座学で学ぶ必要性が薄いということ。要は自分で勉強すればいい。もう一つは逆に、教官が自分の研究している最先端の話をすることが多く、難し過ぎて学生にはおもしろくないということである。
2000年を過ぎた頃から、医学教育はどうあるべきかという問題が、文科省でも相当議論になった。大学によって授業のレベルに差があってはいけないし、学生にとって本当に必要な病気だけをしっかりと教えるべきとの考え方になった。この結果、生まれたのが2001年からのコア・カリキュラムという教育指針である。
小児外科では、もっとも大事な疾患は神経芽腫などの小児がんや胆道閉鎖症と考えていたが、これらは患者数としては多くない。したがってコア・カリキュラムからは外れる。小児外科医は腸重積(乳児や幼児に見られる、腸が腸の中にめくれ込む緊急疾患)だけを教えていればいいということになってしまった。実際には神経芽腫の授業も続けたが、いくら何でも腸重積だけを医学生が知っていればいいというのは違っていると思う。
時代は変わった
また、この時期、教官は学生から評価を受けるようになった。出欠表の紙を配って出欠を取ると同時に、授業の良し悪しを学生が採点する。これは現在、医学部に限らずどの大学でもやっていると思う。教師が、自分の最先端の研究だけを滔々と述べると学生からNGを突きつけられるというわけだ。
こういう流れになると、教官よりも学生の方が何だかエライ感じになり、講義中にペットボトルの飲料を飲むような奴も出てきた。今では普通に見られる光景だが、2005年当時、教官の間で学生の講義中の水分補給は是か非か問題になった。ぼくも最初に見たときには驚いた。
マナー違反と考える教官もいて、そういった学生に退室を命じた「事件」もあった。これはさすがにやり過ぎで、その教官は医学部長から呼び出されて説諭を受けた。説諭を受けたがその教官は納得していなかった。時代は変わったとつくづく思う。
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