外国人材なしに介護の現場は回らない
たしかに2025年末の在留外国人数は412万5395人で、前年末比35万6418人、9.5%増と、初めて400万人を超えました。それにともなって審査や制度運用の負荷が増していること自体は否定できません。
しかし、だからといって、そのしわ寄せを在留外国人個人に、しかもこれほど急激な形で負わせることは妥当と言えるのでしょうか。
とりわけ医療・介護分野では、その負担は本人だけの問題とは言い切れません。
なぜなら、介護はすでに「外国人がいなくても何とかなる」業界ではないからです。
厚生労働省の推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人必要になるとされています。2022年度の215万人と比べれば、2040年度までに約57万人の上積みが必要という計算になるのです。
国はその対策として、先述した処遇改善、人材育成、離職防止、生産性向上と並んで、「外国人材の受入環境整備」も明記しています。
つまり政府自身が、将来の介護供給を維持するために外国人材の力が不可欠だと、すでに公式に認めているのです。
それだけではありません。
厚労省は2025年4月から、一定の条件を満たす技能実習生や特定技能外国人について、訪問介護など訪問系サービスへの従事も認めました。
初任者研修の修了、原則1年以上の実務経験、同行訓練、ハラスメント防止、ICT活用を含む安全確保など、細かな条件を整えたうえで、外国人介護人材を在宅・訪問の現場にも組み込む方向へと制度を広げているのです。
コストを負担するのは誰なのか
つまり政府は一方で、介護の人手不足は深刻だ、生産性向上が必要だ、外国人材の受入環境も整備する、と言いながら、他方で、その同じ人材が日本で働き続けるために必要な在留手続きのコストは大きく引き上げているのです。これではアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものではないでしょうか。
しかも、この負担増は、当該外国人本人が払うだけのお金では済まない可能性があるのです。
特定技能外国人の雇用実務を解説した記事では、在留申請の印紙代や行政書士費用は法令上ただちに企業負担義務があるわけではないものの、本人負担にすると金銭的圧迫が増し、不満や失踪リスクにつながるおそれがあるため、継続就労に不可欠な手続きとして、実務上は、受入れ企業側が負担せざるを得ない場面が広がるとみられるといった指摘も見受けられます。
もちろんこれは公的統計ではなく、実務サイドの見立てではあります。しかし現場感覚としては、かなり自然な話に思えます。
とくに地方と都市部で賃金格差のある現状では、地方から都市部に介護人材の流入が起きるため、とくに地方の事業所などでは、人材確保と定着のために、事業者が費用をかぶらざるを得ないことも、けっして少なくないでしょう。政府は急ぎ実態調査をすべきと考えます。
介護事業者にとって、こうした追加コストは当然ながら軽いとは言えません。人手不足が深刻で、外国人材の受入れに頼らざるを得ない事業者ほど、その影響は大きいものとなります。
さらに介護分野では、一般の市場のようにコスト上昇分をそのまま価格転嫁できるわけでもありません。
そうなると、どこにしわ寄せが行くことになるでしょうか。
経営の圧迫、採用抑制、受入れ縮小、教育投資の圧縮、賃金改善の遅れ……。
結局どれも、現場の持久力を削る方向にしか働かないことになります。

