10月から外国人の支払う在留手数料の値上げが始まる。医師の木村知さんは「永住許可にいたっては、20倍に跳ね上がる。“でも困るのは外国人でしょ”と高を括るのは危険だ。医療・介護現場の状況を見れば、この代償を払わされるのは、ほかの誰でもない、われわれ日本人であることは明白だ」という――。
自衛隊指揮官幹部会同後の昼食会であいさつする高市早苗首相=2026年9月2日、首相官邸
写真=共同通信社
自衛隊指揮官幹部会同後の昼食会であいさつする高市早苗首相=2026年9月2日、首相官邸

首相公式X「介護の環境整備は最重要」

高市首相は8月31日、自身のXポストを更新、令和8年度「介護職員の働きやすい職場環境づくり」内閣総理大臣表彰および厚生労働大臣表彰をおこなったと発信しました。

この中で、高市首相は、介護や福祉の現場では利用者が増える一方で生産年齢人口が減少しており、「生産性の向上」を図りながら介護従事者がいきいきと働ける環境整備が最重要課題だと発信されていました。

表彰式であいさつをする高市総理
表彰式であいさつをする高市総理(出典=首相官邸ホームページ

在宅医療の現場に身をおく者として、日ごろから医療のみならず介護の重要性を身に染みて実感している私は、この問題意識自体は、まったく正しいと思いました。

今後、増すことはあれ減ることのない介護需要に対応していくために、介護職員の待遇改善、人材育成、離職防止は、わが国にとって喫緊の課題だからです。

もちろん、これらに積極的に取り組み表彰に値する事業所の存在も非常に貴重ではありますが、こうした個々の事業所の努力に期待するだけでは不十分です。

高市首相をはじめとした政権全体での切れ目のない政策実行が、今後さらに非常に重要になってくると言えるでしょう。

しかしその一方で、政権として、こうした介護の重要性を本当に認識しているのか疑わしい政策が来月から実施されることを、皆さんはご存じでしょうか。

2026年10月1日から始まる、わが国に在留する外国人の在留資格変更・更新手数料の大幅引き上げのことです。

永住許可の手数料は20倍に跳ね上がる

法務省によれば、在留資格の変更・更新手数料を在留期間に応じた段階制とし、3カ月以下で1万円、1年で3万3000円、3年以上5年未満で6万4000円、5年以上で7万5000円にするとのこと。今月いっぱいまで一律6000円だったものが、在留期間によっては10倍を超える水準に跳ね上がることになるのです。

永住許可にいたっては現行の1万円から一気に20倍の20万円に爆上がりとなります。オンライン申請で多少安くはなりますが、数千円から最大でも1万円ていど。負担増であることに変わりはありません。

【図表1】「在留手数料」価格改定一覧
AIを用いて筆者作成

これは「見直し」というより、在留継続コストの急騰とも言うべきものですが、なぜこんな「爆上げ」をするのでしょうか。そして、これがわが国の医療・介護の現場にどのような影響をおよぼすのでしょうか。本稿では、この問題にフォーカスしたいと思います。

今回の「爆上げ」、政府側の説明は、おおむね以下のような理屈です。

在留外国人が増え、審査コストが上がっていることへの対応であって、在留にかかる行政サービスの受益者(つまり在留外国人)に応分の負担を求め、あわせて外国人政策の財源にも充てる、というものです。