人はいないのに「物流業者」が多すぎる
その理由は、この分野が、単に人手不足であるだけでなく、過当競争の状態に置かれていること、小規模事業者が多く、多層的な下請け構造になっていることと無関係ではない。
こうした構造のもとでは、価格転嫁が困難であるだけでなく、採算が厳しくなっても、低賃金や長時間労働によってかろうじて事業を継続する事業者を生み出す。結果的に、事業者数が減らず、激しい競争が長期にわたって温存されてきた。
ここで特徴的なのは、事業者数が多いまま維持される一方で、各事業者が十分な労働力を確保できていないという実態である。過当競争とは事業者が多すぎることを指し、人手不足とはドライバーが足りないことを指す。
「多すぎる」事業者が同時に求人を出すため、有効求人倍率は高止まりする。しかしそれは、社会全体として労働力が絶対的に不足していることを意味するわけではない。
もし荷物の総量に対して、ドライバー数が足りていなければ、物流の停滞といった形で、経済活動そのものに深刻な影響が及ぶはずである。しかし現時点では、過重労働や現場の無理を前提としながらも、社会全体として物流が全面的に停滞する事態には至っていない。
実際には、個々の現場では深刻な負荷が生じているものの、社会全体としては退出が起きないまま事業者が分立する構造のもとで、人手不足が構造的に再生産されてきた。
賃金の停滞は日本経済全体に波及する問題
このように、日本で人手不足なのに賃金が上がらない理由は、労働組合の交渉力や日本型雇用の特殊性だけでは説明できない。
賃金は、価格と密接に結びついている。価格が抑え込まれている限り、人手不足であっても、賃金は上がりにくい。
人手不足にもかかわらず賃金が上がらないという問題は、介護や運輸といった特定の産業に固有の現象のように見えるかもしれない。
しかし実際には、賃金の停滞は日本経済全体に波及する構造的な問題である。
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