死者数を公表する「研究所」の正体

これは具体的には、猛暑時(1週間の昼夜の平均気温が20℃を超えた場合)の死亡者数から、平年の同時期の平均死亡者数を引いた数字、つまり、世に言う「超過死亡者数」だそうだ。それをロバート・コッホ研究所が発表し、政治家やメディアがセンセーショナルに広めていく。

もっとも1万5000人の直接の死因は、暑さではなく、暑さが引き金となった持病の悪化だ。つまり、重症患者や、心臓や呼吸器を患っていた人が、この時期に暑さで弱って亡くなった。しかも、その半数は85歳以上。ときに、海や湖での溺死者までが「熱死」と関連付けられている。

ロバート・コッホ研究所というのは、ドイツにおける感染症対策や疾病予防の権威で、連邦保健省(BMG)の管轄下にある。

大して目立たなかったこの機関が一躍有名になったのは、コロナ禍の時だった。同研究所の責任者が2年以上にわたり、毎日、コロナの罹患者と死亡者の数を発表し、それを公共放送が1日も欠かさず報道し続けた。

ロベルト・コッホ研究所
ロベルト・コッホ研究所(写真=A.Savin/Free Art License/Wikimedia Commons

ただ、当時も、「コロナ関連死」の本当の死因は明らかにされなかった。交通事故死であっても、心臓麻痺であっても、コロナ検査で陽性であった人は全て「コロナ関連死」としてカウントされていたことを国民は知らなかった。

しかもコロナの場合、検査をすればするほど、当然、陽性者は増える。そして、その膨大な検査を奨励したのもロバート・コッホ研究所だった。

科学的事実か、政府の意向か

ドイツのPCR検査は、ピーク時には1週間で150〜200万回(学校や職場、また家庭での簡易テストは含まれていない)。そして、症状がなくても陽性反応さえ出れば、コロナ感染者とされた。そして、メディアがそれを深刻な顔で伝え、国民の恐怖を煽った。

その結果、これが、接触禁止、外出禁止、集会の禁止、長期間の学校閉鎖など、政府が敷いた数々の規制を正当化するための根拠となった。メルケル首相は2020年のクリスマスの前、世の中の子供たちに向かって、「あなたたちがお爺ちゃんやお婆ちゃんを訪ねれば、今年が彼らに会える最後のクリスマスとなるかもしれません」と、深刻な面持ちでさりげなく言った。

恐怖を感じた国民は従順になるので、政治はやりやすくなる。当時、敷かれた規制の多くは、基本的人権の侵害であったため、政治家が、どこまで国民が従順に従うか実験しているのではないかと疑う声もあった。

最近になって、当時の情報や対策の検証が始まり、その両方に大きな瑕疵があったことが、ドイツだけでなく、欧米で広く知られてきた。そのため、この先頭に立っていたロバート・コッホ研究所は、科学よりも政府の意向を忖度する組織という印象が決定的になってしまった。

こうして信用が落ちているところへ持ってきて、今回は「熱死1万5000人」であるから、当然、この情報にも懐疑的な人は多い。特に、政府が何が何でも進めようとしている脱炭素政策を正当化するためのプロパガンダ役を果たしているのではないかという疑いは根深い。脱炭素政策を継続すれば、権力も予算も継続できる省庁、NGO、また利益の増える企業は少なくない。