「共働き・共育て」推奨という圧

一方で、政府もメディアも「共働き・共育て」を推奨しています。これもまた子育て支援と同じ逆説が起きていると言えます。

「夫婦がともに働き、家事も子育てもともに担う」という理念自体は否定しません。仕事も家庭も両立したい希望を支援する方向もいいでしょう。とはいえ、全員がそれを希望しているわけではないし、全員が両立するだけの能力と環境があるわけではありません。夫婦の仕事の特性でフルタイム共働きができない夫婦もいます。

そもそも、ここでいう「ともに」というものは必ずしも二人が同じように外で働き、同じように稼ぎ、同じように家事と育児の時間をかけるという意味ではないはずです。夫婦とは同じ義務を果たしあう関係ではなく、互いの足らざる部分を補い合い、助け合い、分かち合う関係です。

にもかかわらず、昨今の「共働き・共育て」論は、夫婦ともにフルタイムで働け、同じように年収を稼げ、家事育児時間も同じにしろ、二人とも育休を取れ、といった強制的社会圧を感じます。いわば「共働き・共育て」全体主義のようなものです。

働く妻が飛躍的に増えた背景

実際、夫婦(35~39歳世帯主)の就業形態の推移を見ると、「共働きしたいから」というよりは「共働きせざるを得ないから」という背景が如実に見て取れます。

2000年以降で、妻の有業率が飛躍的に増加していますが、それと反比例するように、夫婦世帯そのものが激減しています。これは、「共働きできる夫婦ではないと結婚できなくなった」という状況です。あわせて、妻の有業率と夫の年収推移(物価高を勘案した実質年収推移)を見ると、夫の年収が下がり続けたことの穴埋めとして妻の有業率が増えています。

近年、夫の名目年収はあがりましたが、実質年収はむしろ2000年時点の水準にさえ届きません。物価高に対応するため、さらに妻の有業率も継続して増加しました。でないと、家計が成り立たないからです。

【図表1】夫婦共働き率が増えている背景の実態

つまり、「共働き・共育て」が若者の希望だから増えているのではなく、そうせざるを得ない経済状況だからであり、物価高の現状ではそれでも追いつかない状況にまで「結婚と出産のインフレ」が加速し、もはや経済上位層しか結婚できない構造を作り上げたということです。