赤字の1軒から、10軒・年商4.7億円へ
梅湯の立地や湊さん個人の話題性だけに頼らず、別の地域でも再生できる手応えを得た。そこで2019年7月、滋賀・石山の「容輝湯」と京都・西陣の「源湯」を相次いで継業した。
短期間で店舗を広げられた背景には、梅湯に集まった人材の存在もあった。24歳で赤字銭湯を引き継いだ湊さんの取り組みが知られるにつれ、将来自ら銭湯を経営したい人や、その理念に共感する若者が集まるようになった。その一部が、各店舗の運営を担ったのだ。
こうして、梅湯でつくった運営体制は複数店舗へと広がった。店舗数と売り上げの拡大を受け、2021年にゆとなみ社を法人化。2025年度の年商は4億7000万円に達し、2026年度は5億円超を目指している。
ゆとなみ社の直営店は現在10店舗。運営支援などを含めると、ゆとなみ社がこれまでに関わった銭湯は14〜15軒に上る。事業は成長したが、湊さんの危機感は強い。
湊さんが梅湯を始めた2015年、組合に加盟する一般公衆浴場は全国に約2800軒あった。それが、この10年ほどで1500軒を切るまでに減少しているのだ。
「年間100軒ほど減っている中で考えると、僕らが支援できた数は全体のごく一部です。スピードとしては全然遅いんです」
事業を拡大しても、救える銭湯の数は、廃業していく数に遠く及ばない。ゆとなみ社の成長とともに、湊さんは業界全体が置かれた状況の厳しさを、より強く感じるようになっていた。
月商1100万円でも「結構、詰んでいる」
さらに店舗の客数や売り上げを伸ばしても、銭湯を残せるわけではない。実はつい最近まで梅湯もピンチを迎えていたと語る。
「実は釜から少しずつ水が漏れ始めていて。ただ、釜は受注生産で、製造できる業者も減っているため、納品まで1年待ちだったんです。釜が止まれば、休業することになります。梅湯は月商1100万円もあり、ゆとなみ社の主力でもあります。いつ止まるか分からない状態で営業を続けましたが、ぎりぎり間に合って交換できました」
設備の問題だけではない。土地や建物をオーナー個人が所有する銭湯では、相続を機に売却され、収支に問題がなくても廃業に追い込まれることがある。たとえ土地と建物を取得できたとしても、老朽化した銭湯を残すには新築まで視野に入れないといけない。
その費用は1軒あたり3億〜4億円ほど。入浴料が500〜600円、月商400万円ほどが一般的な事業で、その資金を調達するのは容易ではない。
「結構、詰んでいる」
そう語る湊さんは、ゆとなみ社とは別に株式会社「ゆばん」を立ち上げた。




