銀行に頼らず、1000万円を現金で払った

メディアへの露出やグッズ展開を重ね、梅湯の客数と売り上げは少しずつ伸びていった。一方で、建物の老朽化という問題は残っていた。特に煙突は倒壊の危険があり、営業を続けるには建て替えが必要だった。

「3年間は梅湯のために頑張れる」

そう考えて始めてから3年がたったころ、湊さんは煙突の建て替えを決断。さらに、物置になっていた梅湯の2階を、休憩スペースとして使えるように改装した。

費用は合わせて1000万円。当時、経営経験がなく、銀行から借り入れるという発想すらなかった湊さんは、梅湯の経営を通じて蓄えてきた資金から全額を支払った。

生まれ変わったサウナの梅湯の煙突
写真提供=ゆとなみ社
生まれ変わったサウナの梅湯の煙突

「また一から頑張ろう」そんな感覚だったと語る湊さん。得た利益を自分の生活に回さず、次の投資として梅湯に還元する。その繰り返しで、店を維持するための環境を整えていった。

自分をシフトから外すと、次の店が見えた

煙突を建て替えても、客数が増えたり、業務が効率化したりするわけではない。それでも、梅湯を続けるには避けられない投資だった。

「煙突、折れてくれへんかな」。1年目にそんなことを思っていた湊さんは、3年後、新しい煙突を建てた。それは銭湯の仕事をこの先も続けていくという意思表明でもあった。

梅湯が軌道に乗ると、湊さんは自らをシフトから外し、スタッフだけで店を回すことにした。

「僕がシフトに入らない分、人件費がかかり、ほとんど利益は出ませんでした。でも、スタッフだけで店を回したことで、僕がいなくても店が動く仕組みをつくれました」

梅湯は湊さん一人に依存する店から脱し、さらに営業時間を延ばしたことで客数と売り上げは伸びていった。日々の営業をスタッフに任せられるようになった湊さんは、次に引き継ぐ銭湯を探し始めた。

「梅湯で培ったノウハウが、ほかでも通用するのかを試したかったんです」

2018年11月、後継者がいないまま2年間閉まっていた滋賀県大津市の「都湯」を継業した。再開当初、1日の客数は約40人だった。

そこで、店をきれいに掃除し、ポスティングやSNSで営業再開を知らせた。番台では来店客に声をかけ、若い客には友人を連れてきてほしいと伝えた。梅湯で培った方法を積み重ねた結果、都湯の客数は1日150〜200人まで増えた。