新しい一歩が重くなる理由

前頭葉、特に前頭前野は、計画する、切り替える、抑制する、複数の選択肢を比較する、未来の報酬を見積もる、といった働きに関わっていると言われている。

言ってみれば、前頭葉は人生の編集長のようなものだ。

何を残すか。何をやめるか。何を変えるか。どこに新しい負荷をかけるか。どの人間関係を深め、どの予定を手放すか。

そういう判断に関わっている。

人生後半に必要なのは、まさにこの力だと思う。

後半戦の戦い方を組み直すには、まず「今までのやり方」を一度横に置かなければならない。これまでの勝ちパターンを全部捨てる必要はない。でも、それを絶対視したままでは、次の戦い方は見えてこない。

もちろん、前頭葉が少し衰えたからといって、すぐに何かができなくなるわけではない。

先に触れたように、その前頭葉が衰えると、新しいことへの一歩は重くなりやすい。

若い頃なら、「面白そうだからやってみよう」で済んだことが、年齢を重ねると、「面倒だな」「今さら失敗したくない」「自分には必要ない」になりやすい。

脳の3Dグラフィック
写真=iStock.com/Alena Butusava
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これは気合いの問題だけではない。脳の処理コストの問題でもある。

だから人生後半で大事なのは、若い頃のようにがむしゃらに頑張ることではない。自分の前頭葉と感情を、閉じさせないことだ。

そのために重要になるのが、「認知的柔軟性」という力である。

変化を面倒に感じたら、危険なサイン

「認知的柔軟性」という言葉がある。

これは僕の造語ではない。心理学や認知科学で使われている言葉だ。難しく聞こえるけれど、要するに、状況が変わったときに考え方や行動を切り替える力のことだ。

予定通りにいかなかったとき、別のやり方を試せるか。自分の思い込みを一度横に置けるか。若い人や違う価値観の人の話を、いったん最後まで聞けるか。

これが、人生後半ではかなり大事になる。

認知的柔軟性は、単に頭がいいということとは違う。

これまでのやり方が通用しなくなったときに、別の方法を試す。予定通りにいかなかったときに、やり方を変える。自分の思い込みを一度横に置く。

それができる人は、年齢を重ねても固まらない。

人生後半で本当に守るべきなのは、この認知的柔軟性ではないかと思う。

なぜなら、後半戦の戦い方を組み直すというのは、言い換えれば、認知的柔軟性を使うことだからだ。

前半戦でうまくいった方法を、全部捨てる必要はない。むしろ、経験は人生後半の大きな武器になる。ただし、経験をそのまま固定してしまうと、それは武器ではなく壁になる。

これまでの自分を活かしながら、必要なところだけ変える。守るものと、手放すものを見極める。慣れた場所に安住せず、新しい小さな負荷を入れる。

それが、脳のレベルで見た後半戦の準備なのだと思う。