成長の勢いは、韓台が約5倍

日本も増えているから大丈夫だ、とはいえない。競争は相対速度で決まる。同じ方向へ走っていても、相手が5倍の速度で遠ざかっているなら、距離は広がっている。

もっとも、45%という高成長が何年もそのまま続くと仮定してはならない。特需には循環があり、供給制約が解ければ価格も変わる。現在の成長率を機械的に延長して将来の輸出額を予測することは適切ではない。

それでも速度差が示す意味は大きい。AI向け先端半導体は、生成AIモデルの学習だけでなく、日常的な推論、企業システムへの実装、ロボットや自動車への搭載によって需要の裾野を広げている。短期の景気循環を超えて、デジタル産業の基盤に組み込まれつつあるからだ。

日本と韓台の差は、いまの順位よりも、成長市場に対する速度の違いとして読むべきなのである。

さらに2階微分、すなわち加速度を見る。ここが今回の分析の核心である。

韓国の集積回路輸出は、2026年上半期だけで2025年の年間実績を上回った。単に輸出額が大きいだけではない。成長の傾きが急になっていることを示す。

実物ベースでは横ばいのままだ

台湾もTSMCを中心に、AI向け先端半導体と先端パッケージングへの需要を取り込んでいる。集積回路は韓国、台湾とも輸出全体の約3割を占め、その中核製品が世界需要の急所に位置している。

台湾積体電路製造(TSMC)の工場・オフィスビル
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一方、日本の輸出数量指数は、価格変動を除いた実物ベースでみると、リーマン・ショック前をピークに近年は横ばいである。円安で円建て輸出額が増える局面はあっても、世界へ送り出すモノの量が持続的に増えているわけではない。

ここでは数学的な表現を正確にしておきたい。2つの主体の加速度の差が一定で続けば、位置の差は時間の2乗に比例して開く。ただし現実の産業では、加速度そのものが供給制約、価格変動、競合参入などによって弱まる。したがって問うべきは、現在の加速度がどこまで持続するかである。そして、その持続力を決めるのが、過去から積分された人材、技術、設備、顧客基盤であり、それらを成長市場へ束ねる「積分器」なのである。

大切なのは、将来を現在の順位だけで判断しないことである。いまの差が小さくても、速度差と加速度差が続けば、数年後の位置は全く違う。経営者も政策担当者も、現在地ではなく「傾き」と「傾きの変化」を見なければならない。