家族が傷つけられたら、どうするか
アイデンティティ融合は、集団との本能的な一体感だ(※9)。これは、人の個人的なアイデンティティが集団のアイデンティティと「融合」したときに起こる。もしあなたが熱心なサッカーファンなら、おそらくわかってもらえるだろう。
あなたが応援しているチームのスタジアムについて考えてほしい。それから、ライバルチームの酔っぱらったサポーターたちが、そのスタジアムで損壊行為を働いているところを想像してほしい(悪意に満ちた、いわれのない蛮行の筋書きを必ず思い描いてほしい)。あなたはそれを自分に対する個人攻撃と受け止めるだろうか? まるで誰かに自宅を穢されたかのように感じるだろうか? もしそうなら、あなたはそのスポーツチームと融合しているのにちがいない。
もちろん、誰もがサッカーのクラブと融合しているわけではない。宗教団体と融合している人もいる。国家と融合している人もいる。さらには、民族集団と融合している人もいる。いっしょに歌を歌う合唱団や、いっしょにクラブに行く仲間に融合している人さえいる。
だが、たとえこの種の集団のどれ1つとも融合していなくてもなお、少なくとも家族とは融合しているかもしれない。ここでまた想像してほしい。もし家族のメンバーがひどい侮辱を受けたり、傷つけられたり、誘拐されたりしたとしよう。あなたはそのメンバーを守ったり救い出したりするために、どこまでやるだろうか? 何があっても諦めないのではないか? もしそうなら、あなたはおそらく家族と融合している。
社会心理学者が唱えた「融合」の概念
融合した人は、その集団を熱烈に守る。集団の他のメンバーと進んで協力するだけではなく、集団が脅かされたときには、集団を守るために命さえなげうつ(※10)。当然ながら、これこそまさに軍の部隊で望まれる種類の態度であり、戦時にはなおさらだ。果たして、街のギャングやテロリストの下部組織から通常の軍隊や自爆テロの実行者まで、融合は実力行使をする幅広い集団で利用されている。
融合の概念は、ウィリアム・B・スワンがテキサスから、アンヘル・ゴメスがマドリードからそれぞれ統率する社会心理学者のチームが最初に構築した(※11)。彼らは当初、この概念を「自己への他者の包含」の尺度に基づいて考えていた。「自己」と「他者」をそれぞれ円で示し、それらの重なり具合で、人が自己の概念の中に他者がどれだけ含まれていると考えているかがわかるという発想だ。
やがてスワンとゴメスは、同じように図示する手法を使えば、自分の個人的アイデンティティが自分の属する集団のアイデンティティにどれだけ取り込まれていると人々が考えているかを突き止められることに気づいた。彼らは重なり具合の異なる小さな円と大きな円の組み合わせをいくつも描いた。そして、調査の参加者たちに、小さな円は「あなた」で、大きな円は「あなたの属する集団」だと告げてから、上の絵のうち、集団とのあなたの関係を最もよく捉えているのはどれかと尋ねた。小さな円が大きな円に完全に内包されている右端の絵を選んだ人は、融合しているという評価を受けた。
