中国国民の87.7%が日本を否定
チャイナ・メディア・プロジェクトはこの矛盾を「道義上の混乱」であると批判する。「煽りながら、一方では取り締まる」のダブルスタンダードは、外交の局面でも繰り返されてきた。
2025年11月、日本の高市早苗首相は国会答弁で、「中国による台湾攻撃は日本の存立を脅かす事態になり得る」と述べ、日本の自衛隊による対応もありうると示唆した。CNNは、中国がこれを機に、報復措置を矢継ぎ早に打ち出したと振り返る。
中国外務省は自国民に日本渡航の自粛を勧告し、同国防省は「日本が台湾海峡に軍事介入すれば壊滅的な敗北を喫する」と警告した。在大阪中国総領事は高市発言について「差し出された汚い首は切り落とすべきだ」とSNSに投稿し、後に削除に追い込まれた。対日強硬姿勢は崩さないまま、物議を醸した投稿だけを撤回してお茶を濁した形だ。
こうして恣意的な指針が出される中、反日感情は着実に強まっている。国立研究開発法人の科学技術振興機構が運営する公的情報サイト「サイエンスポータルチャイナ」が掲載した記事によると、日本に良くない印象を持つと答えた中国国民は2024年、前年の62.9%から87.7%へ跳ね上がった。良い印象を持つ人は37.0%から12.3%へ落ち込んでいる。
「これはゲームではない」の言い分
もっとも、こうした指摘はレッドツーリズム施設の運営側も想定済みだ。
長征体験を運営する婁山関のヤオ氏は、「最終目標は一貫している。これはゲームではなく、記憶されるべき歴史の一章だ」と言う。没入型体験と厳粛な歴史とのバランスを保つ、独自の基準があるのだという。
考証は確かに入念である。グローバル・タイムズによれば、婁山関の公演の刷新にあたり、ヤオ氏のチームは突撃ルートの検証から紅軍部隊の編成、国民党軍の火力配置、軍服の細部まで、徹底した史料調査を重ねた。
同紙は戦闘の実演に、当時国共両軍が使った実物の銃・火砲が100挺以上用いられると説明。1回の公演で発射する空砲は銃弾500発超、砲弾100発超。出演者は200人を超えるとしている。
同じ姿勢は、抗日をテーマにした施設にも見られる。沂南県の施設のヤン・ジースオ副支配人も、同紙の取材に、同観光地自体が革命運動の発祥地のひとつであり、16年にわたりレッドツーリズムの定番であり続けた同観光地では、プロのチームが脚本と特殊効果の歴史的正確性を担保していると説明する。
来訪時90歳だった退役軍人は、こう評価したという。「素晴らしい取り組みだ。今の若い世代には、戦時の犠牲を理解するためにこうした体験が必要だ」
だが、精密な考証を経ているからといって、歴史の政治的背景が偏りなく描かれているわけではない。歴史を体験するはずのこうした施設では、共産党の戦いだけが再現され、国民党軍は敵役としてしか登場しない。
プロパガンダの性質の強い施設を運営しておきながら、「これはゲームではない」と宣言することで、あくまで「歴史教育」と言い逃れている格好だ。

