1日平均1万人が押し寄せる

愛国主義教育法の施行で、レッドツーリズムの現場は目に見えて変わった。

中国国営通信社の新華社が昨年10月に報じたところでは、山西省陽泉市にある百団大戦記念館の来場者数は国慶節の連休7日間で1日平均1万人に達し、前年の3倍を超えた。

複数の施設責任者は、マイカーで訪れる家族連れが大半で、若い旅行者の関心も着実に高まっていると述べる。戦時の状況を描いた映画が相次いで公開されたことも、人気に拍車をかけた。

活況は全国に広がり、抗日にとどまらず様々な角度から愛国心を掻き立てる。施設側はVR機器や没入型ステージを導入し、展示と演出の一新を進める。

グローバル・タイムズによれば、江西省贛州かんしゅうでは、長征をテーマにした没入型叙事劇がこれまでに619回以上上演され、33万8500人超が足を運んだ。国共内戦期の革命根拠地として知られる湖北省洪湖では81カ所の革命歴史遺跡を舞台に野外公演が行われ、地域一帯が「壁のない巨大な屋外劇場」と呼ばれるまでになっている。

抗日、長征、内戦をテーマに、中国共産党の歴史全般を没入型エンタメで国民に刷り込む態勢が、着々と整っている。

百団大戦記念館にあるレリーフ彫刻
百団大戦記念館にあるレリーフ彫刻(写真=Xiumuzidiao/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

中国全土で高まる反日感情

愛国心の高まりが、常に生産的な結果を生むとは限らない。2024年6月、江蘇省蘇州市で日本人の母子がナイフで襲われた事件は、反日感情が煽られた帰結と読み取ることもできる。

中国メディア研究組織のチャイナ・メディア・プロジェクトが取り上げるように、外国人を標的にした刃物による事件は数週間で2件起きており、中国のSNSには犯人を「英雄」と称える排外主義的なコメントが殺到した。

事態を受け、ウェイボー、テンセント、百度、フェニックスメディアなど大手プラットフォームが、「中日間の対立を煽る極端なナショナリズム」に当たる投稿を取り締まると相次いで声明を出した。

だが、その宣言と相反する動向も起きた。テンセントの声明の翌日、6月30日。国営放送の中国中央テレビ(CCTV)は、1930年代に日本軍が偽造紙幣で中国経済を攪乱しようとした歴史を取り上げた記事を、ウェイボーで拡散した。

CCTVを傘下に持つ中央広播電視総台(CMG)の公式アカウント「CMGグローバルニュース」(フォロワー4800万人超)も、「鉄壁の証拠!」と怒りの絵文字を添えて広めている。