足元では食料品にかかる消費税の減税措置が材料視されている。物価押し下げ効果が生じるとしても一時的であり、2年後に再び現行税率に戻すことができる可能性は極めて低い。要するに、効果が見込めないということだ。同時にこのことは、食料品に限定した消費減税では、それほど税収は減少しない可能性が高いということでもある。
ただし対象を絞ったところで、消費減税という行為自体が、ただでさえ高市首相の財政拡張志向を嫌気している市場を刺激するのに十分の内容である。ベッセント財務長官は協調介入に応じる条件として、片山さつき財務相に対して、恐らく財政拡張に歯止めをかけるように要請をしたと考えられる。そうでなければ筋が通らない話である。
最良の妙薬は消費減税の撤回
物価高対策としては、時限的かつ対象を絞った消費減税よりも、定額の給付金を与えるべきだという提案が野党からなされている。とはいえ、どのような手段を取るにせよ、代替財源があることを市場に対して示せない限り、市場は必ず、財政拡張に対して牙を向く。それを市場の誤解だと言う論者もいるが、市場とはそういうものなのである。
裁量の妙薬は、消費減税の事実上の撤回だろう。これが材料視されて金利上昇と円安に弾みがついたのだから、それが撤回されれば、金利上昇と円安の是正が進むと考えられる。選挙公約だから減税は実現しなければならないという意見もあるようだが、それは今回の日米協調介入を招くほどの一大事を招いていることへの危機感を欠く認識だ。
長らく高かった高市政権の支持率だが、最近は無党派層を中心に“高市離れ”が進んでいることが、各種の世論調査で明らかとなっている。危機感を持つ高市首相としては消費減税に踏み込みたいだろう。一方、大多数の有権者は、円安に対して否定的な見解を持っている。自らの消費減税が金利上昇と円安を招けば、結局支持は失われる。
政権の経済アドバイザーがいかに円安にメリットがあるかを説いたところで、大多数の国民が円安を問題視している以上、さらなる円安を招けば政権の支持率は一段と低下しよう。しかし、高市首相はどうしても消費減税を断行するようだ。協調介入も水の泡に帰すようなら、ベッセント財務長官もさじを投げてしまうことになりかねない。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)


