金利上昇に神経を尖らせる米国
今年の2月末に米国がイスラエルとともにイランを攻撃して以降、米国の長期金利は上昇が続いている(図表2)。いわゆる“有事のドル買い”が健在であった一方で、その信用力の源泉となる国債に関しては需要が減少しているわけだ。長期金利を押し上げている最大の理由は、戦争の長期化に伴う米国の財政悪化懸念にあると考えられる。
それに、イラン発のグローバルなエネルギーショックの影響に伴い、産油国である米国でもエネルギー価格が上昇したことを受けて、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに転じるとの観測が強まったことも長期金利の上昇につながっている。タカ派とされるケビン・ウォーシュ氏がFRB新議長に就任したことも、この観測を強めている。
そもそも投資家が、トランプ大統領による荒唐無稽なマクロ経済運営を嫌気し、米国の国債を購入しなくなった可能性も意識される。現に年明けには、機関投資家として有名なデンマークの年金基金が、グリーンランドの領有をめぐる対立に伴い米国の国債を全額手放している。程度の差はあれ、こうした動きが広がっていると考えられる。
こうした不安定な環境のもとで日本が米国の国債を売り、円買い介入を行えば、米国の金利は急騰しかねない。それを懸念したベッセント財務長官が一計を案じ、いわゆるレートチェックを行うとともに、ユーロ資金を売って得たドルで円を買うという奇策に打って出たのだろう。これであれば、確かに米国の国債市場には影響が及ばない。
とはいえ、米国が保有するユーロ現金には限りがあるし、ユーロ建て国債を相手国の承認なくして売却すれば、それが政治問題化することは避けられない。欧州諸国が対日関係に配慮するとしても、ユーロ売りを通じた円買いをいつまでも許すわけない。円を守るためにユーロを犠牲にする手法でもあるため、頻繁に取り得る手段ではない。
日本の財政拡張が米国を直撃する懸念
さらに米国には、日本発の金利上昇圧力が米国の金利上昇につながっていることへの懸念があるようだ。高市早苗首相が就任して以降、市場ではその財政拡張志向が嫌気されて、それまで1%台半ばだった長期金利が3%近くまで急上昇している。日本は米国の国債を多く保有するため、日本の財政状況が悪化すれば米国にその影響が直撃する。
日本の長期金利の上昇テンポは急速だ。欧州で最も信用力が高いドイツの10年国債流通利回りは、今年1月には2.8%程度だったが、7月以降は3%前後で推移している。一方、年明けは2%程度だった日本の長期金利は、7月には3%目前に迫る勢いだ。いわゆる“骨太ショック”など、首相の財政拡張志向が市場に嫌われているためだ。


