ウクライナへの直接支援に残る高い壁

ゼレンスキー大統領がいくら熱望しようとも、現行の防衛装備移転三原則の制約や、パトリオットの知的財産権を握るRTX(旧レイセオン)の承認問題があるため、日本からウクライナへの直接的な技術移転や武器供与には、依然として高い政治的・法的なハードルが存在する。

しかし、戦時中の国家の指導者が公の場で「三菱」の名を讃えたという事実は、日本の防衛サプライチェーンの「ブランド価値」を飛躍的に高める結果となった。

このことは、オーストラリアへのもがみ型護衛艦(能力向上型)の受注・輸出契約締結(2026年4月)やフィリピンへの警戒管制レーダーの供与などと並び、「日本製の装備は信頼できる」という強力な地経学的シグナルを世界に発信している。

かつて日本の防衛産業は、「武器輸出三原則」という厳しい制約のもとで、自衛隊のみを顧客とした、ドメスティックな市場に閉じこもることを余儀なくされてきた。そのため、スケールメリットが効かず、防衛事業は、「コストがかかるわりに利益が出ない、割の合わないビジネス」と評されることも多かった。

大量のコインと戦車の模型
写真=iStock.com/gopixa
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日本の堅実なモノづくりが持つ新たな価値

しかし、時代は変わった。国際情勢の激変に伴い、日本の製造業が実直に守り抜いてきた「高い技術力」「納期を守る堅実さ」「厳格な品質管理」という平時の美徳が、いまや世界の安全保障を左右する戦略的な価値を帯びるに至ったのだ。

習近平政権がヒステリックに三菱電機を狙い撃ちにするのは、日本の防衛産業が形作る次世代の防衛システムが、彼らの野心にとって脅威であることの裏返しだと考えられる。そして、ゼレンスキー大統領が三菱重工を絶賛するのは、その堅牢なモノづくりの力が、専制国家の侵略から人々の命を救う盾になると確信しているからだ。

経済の「武器化」という荒波の中で、日本企業はグローバル戦略の根本的な転換を迫られている。地経学リスクを前提とした冷徹なリスクマネジメントを実践しつつ、世界から求められる自らの「技術の価値」を再定義できるか。「三菱ブランド」に対する各国の政治・軍事指導者の注目は、日本の産業界に新たな覚悟を迫るものでもある。

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