生き残るために日本企業ができること

このあおりを最も受けるのは現場の企業だ。「軍民両用」の線引きはあいまいで、中国側の裁量次第でいかようにも拡大解釈されうる。民生用途のはずの取引にまで支障が出ているとの声も出ている。

象徴的なのが、5月に表面化した富士電機グループ社員の拘束事案だ。レアアース加工品の輸出をめぐって密輸容疑をかけられ、企業の駐在員が常に摘発リスクと隣り合わせに置かれている実態を浮き彫りにした。

経済と安全保障が切り離せなくなった、いわゆる地経学の時代が、実害を伴う段階に入ったと言える。三菱電機は影響調査を進めているとし、三菱重工も現時点で生産への支障はないとコメントするなど、各社は落ち着いた対応を見せている。数年来進めてきた調達先の分散が、一定の緩衝材になっているとの見方もできる。

今後、日本企業が生き残るために実践すべき戦略は以下の3点に集約される。

・調達網の分散:レアアースや電子部品の中国依存を減らし、オーストラリア、東南アジア、北米などの同盟国・同志国との調達網を広げる

・「軍民両用」リスクの点検:防衛と無縁に見える製品でも、中国側の恣意的な解釈によって軍事転用品と見なされるリスクを法務・コンプライアンス面で洗い出す

・駐在員保護の体制整備:富士電機の事案が示すように、拘束リスクを踏まえた安全対策・有事の撤退計画をあらかじめ用意する

ゼレンスキーが三菱重工を絶賛する背景

中国から強烈な圧力を受ける一方で、ユーラシア大陸の西側からは、熱烈なラブコールが届いている。2026年7月9日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が記者団に対し、日本の三菱重工業の名を挙げて、次のように語ったのだ。

「三菱重工は高い水準での生産を実現している。ぜひ知見を共有したい」

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(写真=President of Ukraine/CC-Zero/Wikimedia Commons

ゼレンスキー氏が三菱重工にこれほどまでの熱い視線を送る理由は、アメリカ製の地対空ミサイルシステム「パトリオット」の自国生産をめぐる、劇的な情勢変化にある。

ロシアによる侵略が5年目に入ったウクライナにおいて、弾道ミサイル「イスカンデル」や巡航ミサイル、自爆型無人機による執拗な複合攻撃から、首都キーウなどの都市を守り抜くためには、世界で最も実戦経験のあるパトリオットシステムが不可欠である。

しかし、パトリオットの迎撃ミサイルPAC-3(パックスリー)は、高価で生産に時間がかかる兵器であり、ウクライナへの供給ペースは、常に「戦場の消費ペース」に追いつけない状態が続いている。

また、ウクライナにとって、外部からの兵器支援という「他国頼み」の構造は、支援国の政治情勢や生産余力に自国の防衛が左右されるという、致命的な「軍事的脆弱性」を抱えることになった。