切れ味が良い+研ぎやすい+錆びにくい

これは金属を溶かして固める一般的な「溶製法」とは異なり、金属を粉末状にしてからプレス機で数トンの圧力をかけて焼き固める製法だ。これにより、通常は両立しない「鋼の切れ味」と「錆びにくさ」を両立させることに成功した。

「一般的に、ステンレス素材はカーボンの割合が1.2%以下で、クロムが10%以上のものをいいます。今回開発したキッチンナイフはクロムも10%以上入ってるんですけど、カーボンも2%以上入っているのが大きな特徴です。これが鋼と言われる部分になります。だけども錆びないんです」(土方氏)

こうして生まれた特殊刃材が「VPS(粉末耐食耐摩耗合金)」だ。もともとは過酷な環境に耐えるために開発された金属にキッチンナイフ用の特殊な熱処理を加えたもの。高い靭性(粘り強さ)と耐摩耗性、耐食性を備えている。この特徴により、鋼の切れ味の良さとメンテナンス性(研ぎやすさ)に加えて、ステンレスのような錆びにくさと使い勝手の良さを両立しているのだ。

プレスによって作り出したブロック材を包丁の形にカットしてスライス。表面を研磨して厚みを調整した後、1本ずつ刃付け(刃先研磨加工)していく
提供=愛知ドビー
プレスによって作り出したブロック材を包丁の形にカットしてスライス。表面を研磨して厚みを調整した後、1本ずつ刃付け(刃先研磨加工)していく

「切ると美味しくなる」驚きの結果

実際にトマトや鶏肉を切ってみたが、その切れ味の良さに驚かされた。トマトはほとんど力を入れることなく、薄切りにでき、鶏もも肉は皮面を上にした状態ですっと切ることができた。

筆者も発表会の後、1カ月ほど使い続けているが切れ味の良さは変わらない。すっと引くだけで食材が切れるので使い勝手がいい。

ステンレス包丁との違いで感じるのはやや重いこと。同じ刃渡りのステンレス包丁が約130gだったのに対して、バーミキュラは約196g(実測値)あった。この重さが切れ味にも繋がるのだが、若干慣れは必要に感じた。

トマトにすっと刃先が入って行く。引くだけで包丁の重さで切れていく。力を入れなくていいのでコントロールしやすい
撮影=高須力
トマトにすっと刃先が入って行く。引くだけで包丁の重さで切れていく。力を入れなくていいのでコントロールしやすい

さらに驚かされるのが、バーミキュラ キッチンナイフで食材をカットするとより美味しくなるという実証結果があることだ。バーミキュラ キッチンナイフと鋼の包丁、ステンレスの包丁で、トマトやローストビーフ、マグロをカットして味覚センサー「レオ」で調査・比較したところ、いずれの食材でも「コクがあり、美味しくなる」という結果が出たという。

これは切れ味の良さにより食材の細胞が壊れにくいことや、サビが発生しにくいことで金属臭が食材に移りにくい点など、複数の要因によるようだ。